【感想】『そして、バトンは渡された』人生をそのまま受け止める彼女はまぶしい

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『そして、バトンは渡された』のあらすじ・紹介

森宮優子は3人の父と2人の母を持つ女の子だ。

何度も名字が変わり、高校生の今では、血の繋がっていない「森宮さん」と一緒に暮らしている。

けれども彼女は明るく、健気で、底抜けに良い子だ。家庭のことで気を使われても、むしろ困った様子を見せる。

困った。全然不幸ではないのだ。少しでも厄介なことや困難を抱えていればいいのだけど、適当なものは見当たらない。いつものことながら、この状況に申し訳なく思ってしまう。

瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』文藝春秋,p4

そんな彼女が高校・大学・社会人と成長していく様子が描かれる中で、幼稚園、小学校、中学校の記憶が回想され、かつての父や母の姿が綴られる。

ここではそんな『そして、バトンは渡された』の解説と感想をまとめた。



-内容・見どころ-

・主人公・優子の人間味

この物語の見どころの一つは、森宮優子の人間味だ。

彼女の人生では両親がめくるめく変わるのだが、それが理由でひねくれるだとか、誰かを恨むだとか、そんなことは決してない。

彼女はただ受け入れてきた。もちろん人並みに抵抗はあったけれど、受け入れて生きてきた。受け入れるよう、自分に言い聞かせてきた。

自分の境遇については、あまり考えないようにしている。真剣に考えると、何かが壊れてしまいそうだからだ。

森宮優子という存在が愛おしいのは、彼女がときおり見せるこうした人間味にある。

悲しくないわけじゃない。けれども、気丈に振る舞っているわけでもない。人生をそのまま受け止めて生きている彼女の姿は、とてもまぶしい。



・「森宮さん」の魅力

主人公の優子に「森宮さん」と呼ばれる物語の中心的存在、森宮壮介37歳。

一流大学卒業後、一流企業就職というエリートだが、変なこだわりがあったり、感覚が人とずれていたりして、少し変わっている人物として描かれている。

本来なら重たくなるテーマの物語がこんなにも読みやすいのは、ひとえに彼のおとぼけたキャラクターのおかげだろう。

そんな彼のおとぼけも、東大卒一流企業勤務という肩書きで低俗なものに陥ることを防いでいて、作者のバランス力がうかがえる。

森宮さんは間違いなくこの小説の一番人気キャラクターとして君臨するだろう。

もちろん異論はない。たしかに彼は最高だ。



『そして、バトンは渡された』の感想

少し構造的なことを言うとすれば、実はこの物語の語り手は二人いる。

読んだ方は分かると思うし、未読の方はぜひ本書で確かめて欲しい。図書館で借りてでも良い。

たしかにこうした構成であることは、物語上必要なことのように思う。読み終わったあと心の中で、やるなぁと唸った。

タイトルの「バトン」と言い切る姿勢も潔くて好きだ。

程よい温度のヒューマニティが感じられる、主人公がまぶしい物語。

瀬尾まいこ:単行本(ソフトカバー) – 2018/2/22

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