『浮雲』のあらすじ・解説&感想!言文一致を推し進めた二葉亭四迷の代表作!

『浮雲』とは?

『浮雲』は、二葉亭四迷が明治時代の1889年に発表した小説です。

日本の近代文学において、言文一致体を推し進めた最初の作品でもあります。

教科書で習うばかりであまり読まれることのない『浮雲』ですが、実は内容も面白いのです。

ここではそんな『浮雲』について、あらすじ・感想・考察をまとめました!

『浮雲』のあらすじ

主人公の内海文三は23才

貧しい境遇に生まれながらも立派に学問を修め、無事に官職に就くことができます。

宿は東京にある叔母の家。

そこには18才になるお勢という女性がいます。

年頃の二人ゆえ距離は次第に縮まっていきますが、そんなときに文三は職場をクビになってしまいます。

上司にへつらってヨイショ出来る者だけが社会を生き残り、文三のようにそうできない者は切られてしまうのです。

二人の仲を黙認していた叔母も、そうとなっては態度を変えて、文三にかなり冷たく当たります。

時を同じくして、文三の友人である本田昇が家に出入りするようになってお勢に迫ります。

昇は金も地位もあり、そのうえ話も上手いので、叔母もそちらへ靡きます。

文三は嫉妬と己の不甲斐なさにもだえ苦む日々を送ります。

未完のため物語的な終わりはないですが、揺れ動く心情と見事な文体を楽しむ作品となっています。

・『浮雲』の概要

主人公 内海文三
物語の
仕掛け人
お勢
主な舞台 東京・初冬
時代背景 明治後期
作者 二葉亭四迷

-解説(考察)-

・お政(叔母)とお勢(娘)の対比

『浮雲』は、叔母とその娘の対比が丁寧な作品です。

お勢は女性ながらも、漢学や英語といった学問に秀でた近代的な人物として描かれます。

書かれたのは1880年代ですが、早くも女性の社会進出の影が読み取れます。

一方で、お勢の母であるお政は、旧時代的な人物として描かれています。

教育がないことはもちろん、しきたりや風習といったものに固執します。

このような「社会の中での女性」も描かれているので、ジェンダー的な視点からも作品を楽しむことができます。

また、こうした二人の対比表現は、

  • 言葉遣い

にも現れています。

お勢が、

  • ○○ネー
  • ○○ノネー
  • ○○ノ

という若者の語尾をよく使うのに対して、お政は、

  • ○○ダヨ
  • ○○ダネ
  • ○○サ

といった旧来の言葉をよく使っています。

こうした違いも、言文一致体だからこそできる表現ですね。

このように、『浮雲』は園田家の母娘の対比に注意して読むとより面白みが増す作品となっています。

・文三と昇の対比

『浮雲』は、

  • 主人公の文三
  • 友人の本田昇

という二人の対比もポイントです。

文三は社会に合わせて生きていくことが出来ない、不器用な人物として描かれます。

一方の昇は、上司の顔色伺いを欠かさず、上手に世間を渡っていく人物です。

どちらが良い悪いという訳ではなく、そうした状況をありのままに写しだしています。

ちなみに文三のような人間の苦悩というのは、後の文豪達に受け継がれていくテーマでもあります。

たとえば、夏目漱石の『坊っちゃん』なども同じような色合いです。

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物語的には、この悩みをどうやって克服し立ち向かうかというところが盛り上がるところです(『坊っちゃん』は社会的には敗北し、人間的には勝利しました)。

しかし『浮雲』は未完のため、物語的なクライマックスは待っていません。

お勢は誰と寄り添うのか、文三はどうやって生きていくのか。

そうしたことは想像して楽しむしかありません。

-感想-

・声に出して読むのが面白い

『浮雲』は全体的に名文です。

文章には和語が多く、読んで気持ちの良い言葉の連なりで書かれています。

漢文書き下しの匂いを含んでいる文章の堅牢さと、話し言葉の柔らかさが、程よく混じり合っているのです。

現代小説にはそうした「堅さ」があまりないので、近代文学の文体的な魅力が存分にある作品だと言えます。

もちろん、二葉亭四迷に続いて台頭してくる漱石や鴎外にもそうした魅力は引き継がれています。

黙読だけでなく、ぜひ声に出して読んで欲しい作品です。

以上、『浮雲』のあらすじと考察と感想でした。

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