『源氏物語』が影響を与えた後世の文学作品
平安時代中期に成立したといわれる『源氏物語』。
世界的にみても最古の長編小説で、日本文学の源流ともいえます。
ここではそんな『源氏物語』が影響を与えた、後世の文学作品5つを紹介します。
1.『狭衣物語』
『狭衣物語』は11世紀後半に成立した物語で、帝を血縁に持つ狭衣が主人公。
光源氏と同じく、様々な女性と恋に落ちていく様子が描かれていきます。
明らかに『源氏物語』を意識した作風ですが、女性の末路や主人公の性格などはかなり違っており、作品全体が暗い雰囲気に覆われています。
2.『浜松中納言物語』
『浜松中納言物語』は、『狭衣物語』と同じく平安時代に成立した物語文学です。
やはり主人公が女性と恋に落ち、、、という内容ですが、唐へ渡って物語が繰り広げられたり、輪廻転生というテーマが色濃かったりと、特色のある物語です。
3.和歌
室町時代まで下ると、『源氏物語』は和歌の手本として読み継がれるようになります。
特定の小説というわけではないですが、「影響を与えた文学」という意味では、和歌というジャンルにも多大な影響を及ぼしました。
また、文学は貴族階級のもので、一部の人しか読めないものでしたが、活版が進んだ江戸時代になると、ダイジェスト版が庶民の間で広まり、一大ブームとなりました。
4.『豊穣の海』三島由紀夫
さて、近代文学では、三島由紀夫の『豊穣の海』などが影響を受けています。
厳密には『浜松中納言物語』に影響を受けた作品ですが、『浜松中納言物語』は『源氏物語』の影響を受けているので、間接的に『源氏物語』の影響を受けている作品だといえるでしょう。
また、この頃には『源氏物語』の現代語訳が盛んになり、
- 与謝野晶子
- 玉上琢弥
- 谷崎潤一郎
- 円地文子
などの文学者や研究者たちが現代語訳を完成させています。
5.『細雪』谷崎潤一郎
『源氏物語』を三度も現代語訳し、その度に源氏物語ブームを巻き起こしてきた谷崎潤一郎。
彼の作品にも、『源氏物語』の影響を受けているといわれるものがあります。
代表的なものは『細雪』で、光源氏と藤壺の関係性と重なるようなテーマが潜んでいます。
日本文学を覆う『源氏物語』
近代日本文学を代表する谷崎潤一郎や三島由紀夫が影響を受けていたのであれば、彼らの影響を受けている現代文学も、間接的に『源氏物語』の影響を受けていることになります。
つまり、『源氏物語』は直接的であれ間接的であれ、日本の文学全体に大きな影響を与えているということが分かります。
平安時代においては、「源氏亜流物語」と呼ばれるような強い影響を受けた作品群が生まれ、それより後には間接的に影響を受けた作品が誕生しました。
現代では漫画などにもなっており、瀬戸内寂聴訳や角田光代訳などの現代語訳も続けられています。
時代は変われども、今後も日本文化の流れの中に『源氏物語』は存在し続けることでしょう。
以上、『源氏物語』が影響を与えた後世の文学作品についてのまとめでした。