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ジブリ『風立ちぬ』菜穂子の死について!ラストシーンの意味は?

2021年8月27日

ジブリ『風立ちぬ』菜穂子の死について!ラストシーンの意味は?

ジブリ『風立ちぬ』は、零戦の設計と第二次世界大戦を背景に、主人公二郎と、結核を患っている少女・菜穂子の恋愛が描かれる物語です。

そんなヒロインの菜穂子ですが、最後は死んだのか?どうなったのか?と思うかたも多いかもしれません。この記事では、そんなヒロイン菜穂子の死について、解説します。

菜穂子は死んだのか?

まず、菜穂子は死んだのか?という点ですが、彼女は死んでいると考えて間違いないでしょう。

ラストシーンで、「君を待っていた人がいる。ここで君が来るのをずっと待っていた」というカプローニのセリフがあります。生きているのであれば、手紙や電報など、メッセージを伝える方法はあります。

何年も夢の世界で待つことでしかメッセージを伝えられなかったということは、菜穂子は現実には存在していない、つまり亡くなったのだと考えられます。

では、菜穂子はなぜ亡くなったのでしょうか?自殺という説もありますが、僕は結核で亡くなったと考えています。

菜穂子が自殺した可能性は低い

自殺の根拠として言われているのが、菜穂子が終盤の場面で黒川家を黙って出て、バスに乗っていないということです。

バスに乗らず、自殺する場所を探していたというわけですね。

確かにそのときはバスには乗っていないのですが、その後、列車に乗っている菜穂子の姿が描かれています。

なので、バスに乗らずどこかで自殺した、という可能性は低いように思います。

結核で亡くなったと考える根拠は?

僕が結核で亡くなったと考える根拠は、二郎が飛行場で虫の知らせを感じている場面です。

物語の終盤、二郎は九試単座戦闘機の試験飛行のため、飛行場に行きます。

戦闘機の試験飛行はうまくいき、二郎の目の前をすごい速度で戦闘機が通過しますが、二郎はハッと山の方に何かを感じて、山岳のかなたを凝視するんですね。

皆が喜びに溢れているなか、音も消えて山の方に気を取られ、その後も呆然としている彼の描写には、何かが起こったのだと感じさせるものがあります。

二郎が見つめていた先は、菜穂子の療養していたサナトリウム

九試単座戦闘機の試験飛行は、岐阜県の各務原飛行場で行われました。

この物語で山といえばサナトリウムなので、おそらく二郎が見つめている向こう側には、八ヶ岳にある菜穂子の療養していたサナトリウム「富士見高原病院」があるはずです。

菜穂子が山に帰った、あるいは家に帰っただけで、二郎があのような様子になるとは思えません。

あのときの彼は、菜穂子が死んだということを察知したような、それでいて、そのことを否定しようと葛藤してもがいている様子でした。

こうしてみると、二郎が飛行場でハッとした理由は、サナトリウムにいた菜穂子の死を直感的に感じ取ったからだと考えられるのではないでしょうか。

重要なシーンでいつも「風」が吹いている

また、この物語は重要なシーンでいつも「風」が吹いています。

  • 冒頭の列車で菜穂子と出会うシーン
  • 中盤の避暑地での、菜穂子との再会のシーン
  • 結婚の夜、障子を開けた瞬間のシーン

などですね。

ここで大事なのは、さきほどの飛行場でのシーンでも風が吹いているということ。

飛行場にある吹き流し(約45°の角度になびいていたら風速約5m以上。ほぼ水平になっていたら風速約10m以上を示す)が、およそ45°になびいていて、風速5m程度の風が吹いていることが分かります。

ラストの飛行場で吹く風の意味は「別れ」

菜穂子との出会い、再会、結婚という節目の場面で風が吹いていたのであれば、ラストの飛行場で吹いている風にも何か意味があるはずです。

飛行場で次郎がハッとした理由が菜穂子の死によるものだとすると、ここで吹いた風は、菜穂子との「別れ」を意味すると考えられると思います。

冒頭の風は菜穂子との出会いのシーンで吹いているため、ラストに吹く風が菜穂子との別れのシーンなのであれば、物語の構成的にも綺麗です。

むしろ、こうした対比を「風」の描写に含ませることで、飛行場の場面が菜穂子との別れのシーンであることを、構成的に示しているのではないでしょうか。

結核で亡くなった根拠と考えられる2つの理由

こうした飛行場での、

  • 二郎の呆然とした描写
  • そのシーンで吹いている風の意味

という点から、菜穂子は二郎が各務原飛行場にいるときに、富士見高原病院にて結核で亡くなったのではないかと考えます。

『風立ちぬ』は物語のテンポが速く、時の流れにがんばって追いつかないといけないところがあるので、ラストの菜穂子がどうなったのか、という疑問も出るのかなと思います。

ジブリ『風立ちぬ』の原作

物語の要素は堀辰雄の小説『風立ちぬ』から取られており、ストーリーの骨格は、『零戦-その誕生と栄光の記録』という堀越二郎の自伝がもとになっています。

ジブリ『風立ちぬ』をより深く味わえるので、興味のある方はぜひ読んでみて下さい。

以上、ジブリ『風立ちぬ』の菜穂子の死についてでした。

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