ジブリ『猫の恩返し』の解説&考察
ジブリ『猫の恩返し』は、『バロン、猫の男爵』という漫画を原作にしたアニメです。
今回はそんな『猫の恩返し』のなかで、
- ムタはなぜ何年も生きているのか?
- 猫の国とは一体なんなのか?
- ユキちゃんはなぜ猫の国にいたのか?
といったところをお話ししていきます。
『猫の恩返し』ムタが長生きしている理由
・ムタは猫の国の大犯罪猫
ムタは、『猫の恩返し』に登場する白い大猫です。
本名はルナルド・ムーン。かつて猫の国にフラッとやってきて、湖の魚を食い尽くして逃げたという、猫の国の最大にして最悪の犯罪者でもあります。
・ムタは30猫年以上生きている
猫王はムーンがもう一度来たときのために、城の周りに大迷路を作り、逃げられないようにしました。
原作では、この迷路を作るのに「30猫年」かかったと書かれています。つまり、少なくともムタは「30猫年」以上は生きているということになります。
30猫年が人間時間でどのくらいなのかは分かりませんが、猫王も「どうやってそんなに長く外の世界で生きられるのにゃ?」と言っていることから、ムタは猫としてはあり得ないくらい長生きしているということが分かります。
・ムタは化け猫だった!?
ムタはなぜ何年も生きているのか?その理由はおそらく、ムタが化け猫だからであると考えられます。
化け猫の伝説は世界各地にありますが、その多くは、一定の年数以上長生きした猫が化け猫になるというもの。
化け猫は体格が大きく、人間の言葉を話したり、人間を襲ったり、人間に取り憑いたりするという伝承が、日本各地にもあります。
ムタはこうした化け猫伝承をもとにして作られたキャラクターであり、ただの猫ではなく化け猫として生きているため、普通の猫よりもずっと長く生きているのではないかと考えられます。
『猫の恩返し』猫の国とは一体なに?
次は、「猫の国とは一体何なのか?」という点です。
ムタは猫の国について、次のように述べています。
「ありゃあ、まやかしだ。自分の時間を生きられない奴が行くところさ」
・猫の国=死んだ猫の行くところ
ムタが「まやかし」と言っているように、猫の国はにせものの世界であり、現実の世界ではありません。
また、自分の時間を生きられない、=死んでいるということから、猫たちの死後の世界を示しているとも考えられます。
実際、作中で猫の国に行ったのは、現実逃避がちで自分の時間を生きられていなかったハルや、死んでしまった猫たち(後述)です。
原作のユキちゃんは猫の国について、「ここは人の世界にいられなくなった猫の来る所」といっています。
さらにムタは、「ここはいつでも昼なんだぜ」とも呟いています。いつでも昼ということは、時間が止まっているということ。死ぬと時間は必要ないため、この世界では時が止まっているんですね。
だから猫の国の住民たちは年をとらず、いつまでも同じ姿のままで生きています。
・ムタだけは外の世界でも年を取らない
しかし、ムタはそんな猫の国の住民ではないのに年を取らないことから、猫王が「どうやってそんなに長く外の世界で生きられるのにゃ?」と言っているわけです。
この答えは先ほど書いたように、ムタは普通の猫ではなく「化け猫だから」ということですね。
ただし、ルーン王子がユキちゃんに魚のクッキーをプレゼントするために人間世界へ行ったり、猫王の行列がハルの家の前まで行ったりしていることから、人間世界では住めないものの、どうにか行き来はできるようです。
こうしたことをふまえると、「ユキちゃんはなぜ猫の国にいたのか?」という3つ目の疑問は解決できます。
『猫の恩返し』ユキちゃんはなぜ猫の国にいたのか?
もうすでに分かったかもしれませんが、猫のユキちゃんは人間世界で死んでしまったために、猫の国にいきました。
ジブリ版では描かれていませんが、原作では、ユキちゃんが車はねられて命を落とした回想シーンが描かれています。
ジブリ版でも、ユキちゃんは登場時からずっと心配そうな表情をしていて、「ハルちゃんはここにいちゃいけないのよ」と言ったりしています。
ハルには時が止まった死後の世界ではなく、もとの人間世界で自分の時間を生きてほしいと思っていることが、ユキちゃんの描写からは伝わってきます。
『猫の恩返し』疑問点まとめ
以上をまとめると、
- ムタはなぜ何年も生きているのか?→化け猫だから
- 猫の国とは一体なんなのか?→自分の時間を生きられなくなったり、死んだりしたものが行くところ
- ユキちゃんはなぜ猫の国にいたのか?→すでに死んでしまった猫だから
ということになります。
ちなみに『となりのトトロ』に出てくる猫バスなんかも、大きく考えれば化け猫の一種なので、個人的にはムタと猫バスは同じジャンルのキャラクターだと思っています。
『猫の恩返し』の原作は『バロン・猫の男爵』という柊あおいさんの漫画です。
物語自体はほとんど同じですが、絵のタッチや猫の国の設定など、原作でしか味わえない部分もあるので、興味の湧いた方はぜひ読んでみて下さい。
以上、『猫の恩返し』考察のおはなしでした。