名作の多い寡作な作家
中島敦といえば『山月記』ですが、ほかの作品にも面白いものが多くあります。
とはいえどんな小説があるのか、あまり知られていないのも事実でしょう。
ここでは、
- 『山月記』以外の中島敦作品を読みたい
- 中島敦の小説を全体的に知りたい
という方のために、中島敦のおすすめ小説を9作品まとめました。
先にどんな作品が紹介されているのか知りたい方は目次からどうぞ。
中島敦のおすすめ小説9選!
1.『名人伝』
こんな方におすすめ
- ユーモアのある作品が読みたい人。
- 中島敦の晩年の作品に触れたい人。
『名人伝』は、真面目な主人公が弓の名人になるまでの話です。
構成的には『山月記』と対になっていて、中島敦が生涯で最後に書いた作品ではないかとも言われます。
ユーモラスな内容ですので、おかしみのある作品を読みたい方におすすめです。
2.『文字禍』
こんな方におすすめ
- 中国以外の昔の物語を読みたい人
- 中島敦の初期作品に興味がある人
『文字禍』は中島敦の初期作品です。
中島敦の「古潭四篇」という作品群の一つとして数えられます。
○古潭四篇○
- 『狐憑』
- 『木乃伊』
- 『山月記』
- 『文字禍』
『文字禍』はアッシリア王国の老博士が文字の研究をする物語です。
中東が舞台となっているので、中国物ではない中島敦の小説を読みたい方におすすめです。
3.『光と風と夢』
こんな方におすすめ
- ボリュームのある物語が読みたい人。
- 大家(川端康成)が褒めた定評のある作品を読みたい人。
『光と風と夢』は、中島敦の芥川賞候補作です。
英作家・スティーヴンソンが、晩年を過ごしたサモア諸島で書いた日記という形で物語は進んでいきます。
実在した人物のと実際の出来事を取り上げているので、半伝記的な小説だと言えるでしょう。
中島敦の作品では最も長い小説ですので、ボリュームのある物語が読みたい人におすすめです。
4.『悟浄出世』
こんな方におすすめ
- 『西遊記』をなんとなくでも知っている人。
- 『バケモノの子』の元ネタを知りたい人。
『悟浄出世』は、『西遊記』の登場人物である沙悟浄(さごじょう)を主人公にした作品です。
沙悟浄が「自分とは何か?」という答えを探し、三蔵法師一行に出会うまでの物語がつづられます。
『西遊記』を読んだことのある人はもちろん、読んだことのない人にとってもおすすめの小説です。
ちなみにですが、細田守監督のアニメ『バケモノの子』の元ネタにもなっている作品です。
面白いので、ぜひ続編の『悟浄歎異』とセットで読んで見て下さい。
5.『牛人』
こんな方におすすめ
- ダークな雰囲気の作品が読みたい人。
- 短くさっと読める物語を探している人。
『牛人』はとても短い小説で、中国物のひとつです。
『盈虚(えいきょ)』という作品と一緒に、中島敦の「古俗」としてまとめられています。
○古俗○
- 『盈虚』
- 『牛人』
『牛人』は、牛のような顔をした豎牛(じゅぎゅう)という子どもが軸となって話が進む物語です。
中島敦の書いた小説の中で、もっとも不気味な雰囲気をかもし出しているのがこの作品かもしれません。
少しダークな雰囲気が好きな方におすすめの小説です。
6.『カメレオン日記』
こんな方におすすめ
- 中島敦の私小説的な作品が読みたい人。
- 漢文体が苦手な人。
『カメレオン日記』は、カメレオンをもらった主人公の物語です。
自我や病、思想など、中島敦の抱えていた問題が前面に出ている作品です。
文体も話し言葉に近く、漢文体が苦手な人でも読みやすいでしょう。
私小説的な手法の小説が好きな方におすすめです。
7.『弟子』
こんな方におすすめ
- 熱い主人公が出てくる物語を読みたい人。
- 中国古典の『論語』に興味がある人。
『弟子』は、中国の思想家である孔子の弟子・子路を主人公にした物語です。
温和な師匠である孔子と、真っ直ぐで気性の激しい子路の師弟関係が描かれています。
情熱的な主人公が出てくる物語を読みたい人におすすめです。
子路の半生がダイジェストで書かれているので、中国古典の『論語』の理解にも繋がります。
8.『李陵』
こんな方におすすめ
- 中国物の小説を楽しみたい人。
- 「運命」が主題の作品を読みたい人。
『李陵』は昔の中国で活躍した武将、李陵を主人公にした物語です。
中島敦の遺作のひとつであり、彼特有の漢文体で書かれた中国物の作品です。
歴史家の司馬遷や、蘇武という有名な武将なども重要な脇役として登場します。
中国物の作品を楽しみたい人におすすめの小説です。
9.『山月記』
こんな方におすすめ
- 中島敦の定番作品を読みたい人。
- 習ったことにとらわれず再読したい人。
『山月記』は虎になってしまった主人公の物語です。
高校の教材に取り上げられているので、中島敦作品の中ではもっとも有名な小説でしょう。
大人になってから読むとまた違ったところが面白く感じるので、再読におすすめの作品です。
多くの方が「尊大な羞恥心」と「臆病な自尊心」が重要だと習ったと思いますが、実は今の研究ではあまり重要視されません。
ですので、習ったことは置いておいて、ぜひ自由な読み方でもう一度『山月記』にふれてみることをおすすめします。
どの短編集がいいの?
以上、中島敦のおすすめ小説9選でした。
彼は寡作な作家ですが、色々な出版社から短編集が出ています。
その中でも僕がおすすめしたいのは、こちらの『中島敦 (ちくま日本文学 12)』です。
この短編集には、上で紹介した『光と風と夢』以外の作品が収録されているのに加えて、ほかの主要な作品も入っています。
無人島に持って行く中島敦の短編集を一冊どれか選べと言われたら、僕はこれを選ぶでしょう。
『光と風と夢』は青空文庫で読むか、紙で読みたければ中島敦全集の1巻がおすすめです。
全集は、短編集には載らない、
- 習作
- 断片
- 日記
- 書簡
も網羅されているので、中島敦をまるっと知りたい方は全集がおすすめです。
全三巻ですので、短編集を二冊買うのなら全集を買うことをおすすめします(僕も持っているのは全集です)。
中島敦は短い小説が多いので、気軽に読んでみてぜひあなたに合った作品を見つけてみてください。
以上、中島敦のおすすめ小説まとめでした。