高見順の紹介 ~無頼派・左翼・饒舌体~
太宰治や坂口安吾と同じように「無頼派」としてカテゴライズされる高見順。
左翼活動の経験から、弱者や敗北者の視点から物語を描いていくことの多い作家です。
また、語り手が積極的に顔を出す「饒舌体」といった文体で、作者特有の世界観を構築しています。
高見順の作品が気になるけど、どれが良いのか分からない。
ここではそんな方のために、厳選した高見順の小説3作品をまとめて紹介します。
高見順のおすすめ小説3選!
1.『故旧忘れ得べき』
一つ目に紹介する『故旧忘れ得べき』は高見順の芥川賞候補作で、転向文学の代表的な作品として知られています。
左翼活動に傾倒した学生時代と、左翼活動から離れた現在の生活の対比を通して、主人公とその友人達の自我が描かれる物語です。
高見順の代表作を読んでおきたいという方におすすめです。
こんな方におすすめ
- 高見順の代表作でもあり、転向文学の代表作でもある作品を押さえておきたい人
- 左翼活動に傾倒した人々の自我に触れたい人
2.『如何なる星の下に』
二つ目に紹介する『如何なる星の下に』は、東京・浅草を舞台に人々の喜劇が繰り広げられる物語です。
1939~1940年に連載された小説で、戦争の影も少なからず見られますが、まだまだ活気ある東京の下町が描かれています。
作者なりの視点で浅草という町が捉えられているところが面白い作品です。
政治的活動が前面に出ている作品ではないので、とにかく読みやすい物語が知りたいという方におすすめです。作中には『どぜう飯田』が出てくるなど、親しみやすさも満点です。
こんな方におすすめ
- 高見順の読みやすい作品を探している人。
- 当時の浅草の雰囲気を味わいたい人。
3.『いやな感じ』
三つ目に紹介する『いやな感じ』は高見順の後期の作品。
昭和初期の動乱の中、アナーキストとして社会と過激に闘う主人公を描いています。
隠語を使う独特な文体が作品の雰囲気を高めていて、物語的にも高見順の傑作だと言えます。
ただ少し長いので、小説を読み慣れている方におすすめの作品です。
こんな方におすすめ
- 長くても良いから面白い作品を知りたい人。
- 後期の高見順の作品に触れたい人。
+αで読みたい作品!
.詩集『死の淵より』
高見順は詩人としても活動していて、中でも「われは草なり」などは有名な詩です。
そんな彼が死の前年に発表したのが、詩集『死の淵より』。
食道癌で入院していた際に書いたメモをもとにつくった詩が収められています。
死が高見順という作家の心をあぶり出したような、切実な内容が多い詩集。晩年の作者を知るのにおすすめの作品です。
こんな方におすすめ
- 晩年の高見順の作品に触れたい人。
- 小説でなく詩も読みたい人。
一番のおすすめは?
以上、高見順のおすすめ作品3選+αでした。
個人的に一番のおすすめは『いやな感じ』です。
高見順の作品の中でも手に入りやすいという点も魅力的です。
太宰や坂口安吾と並んで無頼派と呼ばれる高見順ですが、二人とは全く違った魅力が彼の作品にはあります。
近代文学を知るにあたって読んでおきたい作家のひとりです。
以上、高見順のおすすめ小説3選+αでした。