『源氏物語』「雨夜の品定め」上・中・下の女を徹底解説!

『源氏物語』「雨夜の品定め」とは?

「雨夜の品定め」とは、『源氏物語』第二帖「帚木」で、

光源氏・頭中将・左馬頭・藤式部丞の四人が、「世の中の女性」についてメンズトークをする

といった場面です。

女性を「上・中・下」に分けたり、こんな女はダメだなどと、上から目線な男たちの会話ではあります。

しかし、当時は男性の心理を知るすべがなかったので、紫式部は物語という形式で、世の女性たちに男性の考えを伝えました。

ここではそんな「雨夜の品定め」で、

  • どのような会話が交わされたのか
  • どんな女性が「上・中・下」なのか
  • 良き妻になる女性はどのようなひとか

といったことを解説していきます。

「雨夜の品定め」でどのような会話が交わされたか

「雨夜の品定め」では、次のような順番で話が繰り広げられます。

  • 女の「上・中・下」
  • どのような女性が良き妻になるか
  • どのような女性がイヤか

まず語られるのは、女には「上・中・下」の品があるということ。

そして次には、「どのような女性が良き妻になるか」。

そして最後には、「どんな女性が嫌か」という話で終わります。

ちなみにこのとき、光源氏は17歳。

季節は初夏の5月で、夜勤の職務中に男4人で話しています。

どんな女性が「上・中・下」なのか

「上・中・下」の話は、頭中将と左馬頭の二人が、メインになって話しています。

光源氏と藤式部丞は聞き役ですね。

頭中将がいうには、女の「上中下」は以下のように分けられます。

  • 上の女:容姿も性格も家柄も完璧な女(ほとんどいない)
  • 中の女:もとは上流階級だったが落ちぶれた中流階級の女・もとは中流だったが上流まで成り上がった家柄の女・思わぬ家でたいそう立派に育てられた女
  • 下の女:下流階級の女

頭中将や左馬頭は、「上の女」などはほとんどいないと言っています。

そのため「中の女」が一番良いとし、

意外なところで「中の女」に出くわすと興味がそそられる

と言い合います。

「下の女」に関しては、「どんな女がいるのだか、私には興味が持てない」と言っており、話題には上がりません。

ちなみに、『源氏物語』に登場する女性を階級別に「上・中・下」で分けると、以下の通りになります。

  • 上の品(皇族や大臣の娘):藤壺・葵の上・六条御息所・朧月夜・朝顔の斎院・女三の宮・秋好中宮・弘徽殿の太后・明石中宮
  • 中の品(国司の娘や没落皇族の娘):紫の上・空蝉・夕顔?・末摘花・花散里・明石の君・玉鬘・大君・中の君・浮舟
  • 下の品:夕顔?

理想の女性像

では具体的に、彼らはどのような女性が良いのでしょうか。

彼らは、よくいる女性像を話し合って、どのような女性も欠点があると言い合います。

  • 顔も可愛くて手紙も上手といった妻はダメ。浮気事が多いから。
  • 世話ばかりで才色のない女もダメ。一緒にいてて楽しくないから。
  • 子どものように素直な女もダメ。自分で何にも決められず、こちらが大変だから。
  • 無愛想な女はもちろんダメ。でもこんなのの中には、非常に気が利くのもある。
  • 嫉妬深い女もダメ。疲れるから。
  • 家出をしたりして気を引く女もダメ。そんなのは逆効果になることが多いから。

あちらが立てばこちらが立たず、といったふう。

彼らの話をまとめると、

才色兼備で、夫の世話をしっかりとして、頼りがいがあり、趣味も良く、素直な心を持ち、いつも気が利いて、嫉妬はあまりせず、したとしても、むしろ愛おしくなるような程度をわきまえていて、家柄も良く、節度のない行動で夫の気を引こうともしない、利口な女

そんな女に、わたしはなりたい。

はからずも宮沢賢治の『雨ニモ負けず』みたいになってしまいましたが、たしかにこんな完璧な女性はいません。

男の願望が詰まったような女性像ですね。

現代の男性に聞いたとしても、あまり変わらないかもしれません。

良き妻になる女性はどのようなひとか

こうして色々な女性の欠点を挙げて、「完璧な女などどこにもいないのだ」ということを前提にしたところで、一応の結論が出ます。

それが以下の文章。

「身分や容姿は度外視して、ただ一途に実直で、落ち着いたところのある女性を妻にすべき。まあそれに加えて、何かの才能とか、心遣いでもできる女性ならラッキーだと思って、少しくらいの欠点には目をつぶるべきだよね」

なんと、一気にストライクゾーンが広がりました。

  • 一途
  • 実直
  • 落ち着いている

この3要素があれば十分良き妻。身分や容姿はもういいよね。と言っているわけです。

一応原文&現代語訳は以下。

今はただ、品にもよらじ。かたちをばさらにも言はじ。いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは、ただひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべをぞ、つひの頼みどころには思ひおくべかりける。(こうなってはもう、身分の良し悪しもなく、ましてや顔の良し悪しも言わないことにしましょう。話にならないようなひねくれ者でなければ、ただ一途で実直で、落ち着いた心のある女性を、生涯の伴侶とするのがよいというものでしょう。)

『源氏物語「帚木」』

たしかに大事な三要素です。

結局は「気楽に過ごせる女性が良い」ということに落ち着き、ここも現代とあまり変わらないような気がします。

「雨夜の品定め」の面白さ

「雨夜の品定め」は、4人の貴公子たちがそれぞれの経験談から、独特な論理で女の良し悪しを語るところに面白みがあります。

たとえば、

  • 男性の浮気心の心理を説き、そのような場合に女性はどのような行動をとるべきか

といった場面などは、滑稽でもあると同時に、実用的でもあります。

梗概としての「雨夜の品定め」

「雨夜の品定め」の場面を読むと、

  • これから色々なタイプの女性が登場すること
  • 女性が登場したときに、どのようなタイプなのかを
  • 男性は女性のことを、また女性は男性のことをどのように思っているのか

といったことが分かるようになっています。

「雨夜の品定め」で描かれる挿話は、数々の女性が登場する大長編小説『源氏物語』の、ダイジェスト版とも言えるでしょう。

『源氏物語』のなかでも有名な場面なので、興味があれば一度読んでみて下さい。

以上、「雨夜の品定め」上・中・下の女についての解説でした。