源氏物語

源氏物語「夕霧」のあらすじ!落葉の宮との結婚から雲居雁との夫婦喧嘩まで!

『源氏物語』第39帖「夕霧」のあらすじ

光源氏:50歳

落葉の宮に迫る夕霧

落葉の宮に想いを寄せていた夕霧は、落葉の宮の母・一条御息所が病で不在のとき、彼女に迫ります。

強引に泊まっていこうとする夕霧に対して、落葉の宮は嫌悪感を示し、頑なに彼を拒みました。

一条御息所が夕霧と落葉の宮の関係を知り、息絶える

一条御息所は、夕霧と娘の落葉の宮が関係を持ったという噂を聞きます。

事実ではありませんが、彼女はそれを確かめることもできません。

夕霧に事実を確認しようと手紙を送るも、その手紙は夕霧の妻・雲居雁に隠され、返事が来る前に亡くなってしまいます。

夕霧と落葉の宮の結婚

母を亡くして悲しみに打ち沈む落葉の宮。

後ろ立てを失くした彼女は、もはや強引に結婚を進める夕霧を止めることができません。

せめてもの抵抗として部屋に鍵を閉め、夕霧が入って来られないようにしますが、結局は彼に頼って生きていくほかないことを悟るのでした。

雲居雁と夕霧の騒動

そのころ雲居雁は、夫が落葉の宮を妻にしたことに腹を立て、実家へ帰ってしまいます。

さすがにマズイと思った夕霧は、彼女をなだめに行きますが、二人は離婚寸前の口論になります。

そんな夕霧と雲居雁の間には子どもが7人、それから愛人・藤典侍との間には、5人の子どもがいるのでした。

『源氏物語』「夕霧」の恋愛パターン

夕霧―落葉の宮

  • 夕霧:色恋を知らないため、強引な形で結婚を進め、落葉の宮から拒絶される
  • 落葉の宮:夕霧のことを母親の仇だとすら思っており、彼を頑なに拒むものの、男の力がなければ生きていけないことを悟る

『源氏物語』「夕霧」の感想&面白ポイント

この巻では、夕霧と落葉の宮の恋愛が描かれます。

プレイボーイな父・光源氏とは違って、息子の夕霧は一途な男として生きてきました。

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しかし、29歳という年齢になり、初めて色恋沙汰に溺れてしまうのです。

経験が少ない夕霧は、壊滅的に駆け引きが下手で、女心も分かっていません。

そんなわけですから、相手の落葉の宮には頑なに拒絶されますが、最後は強引に結婚まで漕ぎ着けるというストーリーになっています。

そんな「夕霧」巻を面白くしている仕掛けは、それぞれの「勘違い」と「すれ違い」です。

夕霧が落葉の宮のもとに泊まったことをきっかけに、それぞれの人物の思いがすれ違っていきます。

以下では、それぞれのすれ違いを簡単にまとめました。

  1. 【きっかけ】夕霧が落葉の宮のもとで夜を明かす(一緒には寝ていない)
  2. 一条御息所(落葉の宮の母親)は、夕霧と娘が関係を持ったと勘違いして、確認の手紙を夕霧に送る
  3. 雲居雁(夕霧の正妻)が、夕霧の浮気相手からの手紙だと勘違いして、隠してしまう
  4. 一条御息所は、返事が来ないので娘が捨てられたと勘違いして、失意のなか息を引き取る
  5. 落葉の宮は母を亡くして悲しみに打ち沈み、原因を作った夕霧を逆恨みする
  6. ようやく手紙を読んだ夕霧は、返事が遅すぎたこと知るが、落葉の宮を妻にしようと決意する
  7. 夕霧は落葉の宮と結婚できたものの、彼女は部屋に鍵をかけて拒絶する
  8. 雲居雁は、夕霧と落葉の宮が結婚したことにあきれて、実家へ帰ってしまう
  9. 雲居雁にも離れられ、落葉の宮にも拒絶された夕霧は、色恋沙汰の辛さを身にしみて感じる

赤文字が勘違いの部分、青文字がすれ違いの部分ですね。

次には、そんな誤解・すれ違いの背景を、分かりやすく解説していきます。

亡くなった一条御息所の誤解

一条御息所は、夕霧と落葉の宮が関係を持ったと誤解しています。

彼女はずっと落葉の宮と暮らしていましたが、病気がちになっていたので、山荘で療養していました。

そこへ祈祷をしに僧侶がやってきます。

今朝、夕霧殿を見かけましたよ。落葉の宮さまの元へお泊まりだったようです。
高僧
一条御息所
な、なんと!私のいない間に、なんて情けない・・・
まぁ、あのお方はやめておいた方が良いですよ。なんたって雲居雁さまの立場が強すぎます。(雲居雁の父親(頭中将)は権力が強い)
高僧
一条御息所
それはもちろん承知しておりますが・・・これ、こんな嘘のような話を聞きましたが本当ですか?
たしかに、夕霧さまが我慢していたお気持ちを打ち明けられました。あ、鍵はかかっていたので接触はありませんが・・・(嘘)
女房1
一条御息所
(信じられるもんですか。)いくら潔白だとしても、こうして噂は立ち、大きくなるものです。落葉の宮を呼んでください
落葉の宮さま、一条御息所がお呼びです。夕霧さまとの件で。一応鍵はかかっていたと言っておきましたが・・・
女房1
ああ、情けないことになってしまった。お母さまに失望されてしまうなんて・・・
落葉の宮
一条御息所
落葉の宮よ、こうなってしまっては仕方ありません。夕霧にきちんと返事をしなさい
・・・(私、夕霧と関係を持ったわけではないんだけどな。はしたない話だから言い出せない・・・)
落葉の宮

一条御息所はこのとき、こうなったからには、夕霧と落葉の宮は結婚になるのだろうと考えています。

当時の結婚は「通い婚」といい、男性が女性の元へ3日間通うことで成立します。詳しくは玉鬘と髭黒大将の結婚でまとめてます▽

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そのため一条御息所としては、明日も通ってくるのだろうと考え、夕霧に手紙を送るわけです。

小助
しかし、夕霧は落葉の宮と夜を過ごしていないので、続けて家を訪ねることは控えるんですね。

さらに、一条御息所からの手紙も雲居雁が隠してしまったため、一条御息所が勘違いしていることを、夕霧は知ることができません。

結局夕霧が来なかったことを知った一条御息所は、娘が見限られたと思い、無念の内に亡くなります。

その結果、夕霧のせいで母が心労に苦しみ死んだと思った落葉の宮は、夕霧を逆恨みするというわけですね。

『夕霧』巻は、こうしたそれぞれの勘違いや気持ちのすれ違いが、何層にも重ねて描かれています。

現代でも恋愛をすると、勘違いやすれ違いによって起こる問題は避けては通れません。

こうした、長い時を経ても変わらない問題が細かく描かれているところに『源氏物語』の魅力があります。

雲居雁と夕霧のやり取り

さて、落葉の宮と夕霧の関係に、我慢しかねたのは雲居雁でした。

周りの女房たちも、これまでとは違った夕霧の態度に閉口しています。

女房
最近の夕霧殿はいつも恋患っているようで、本当に見苦しいですわ。これまでこんなことは一切無かったのに・・・
雲居雁
かつてはオシドリ夫婦と言われた私たちですが、これからは世間から馬鹿にされることになるのでしょうね・・・
(久しぶりに帰ってくる)いやぁ、ただいま戻りましたよ
夕霧
雲居雁
ここにあなたが大好きな落葉の宮はおりませんよ?いるのは鬼になった私だけです。いつも私のことを鬼だ鬼だと言うので、どうせなら死んで鬼になります
たしかにお気持ちは恐ろしい鬼みたいですが、見た目が可愛いので鬼だとは思えませんね
夕霧
雲居雁
長いこと一緒にいましたが、その時間さえも今となっては後悔されます。いっそのこといなくなってしまいたいくらいですわ
そう幼げに拗ねられるのも慣れてしまいました。鬼らしく神々しい威圧感を出してみてはどうでしょう
夕霧
雲居雁
何をおっしゃいますか。もうあなたは死んでしまってください。私も死にます。私だけが死んだ後では、あなたがきちんと生きていけるか気がかりなので
結局は私を愛してくれているのですね。昔言った通り、あなたが死んだら私も死にます。だからご機嫌を直してください。私がこれまであなたのことを一途に思ってきた事実を忘れないでください
夕霧

こうしてなんとか雲居雁をなだめる夕霧。

そしてその純粋さゆえに、簡単に機嫌を直してしまう雲居雁。

しかし彼女は結局、しばしばある夕霧の外泊を許せず、実家へ帰ってしまうのでした。

今さら分別もない若者のようなことをするではありませんか。子どももたくさんいるというのに、こんな軽はずみなことをしないでほしいな
夕霧
雲居雁
あなたに飽きられた私ですので、無理して一緒にいることもないかと考えまして。子どもたちはあなたが育ててくださいな(育てられるはずもないでしょうが)
ご立派なお考えですね。これではあなたの悪評も立つことでしょうよ。それではあなたの言う通り、私がなんとか育てましょう
夕霧
雲居雁
(清々しいところのある夕霧だから、本当に子どもたちを連れて行ってしまうかもしれない・・・)
ほら、みんなこっちへおいで。お母様の教えを聞いてはいけませんよ。お父様の言うことを聞きましょうね
夕霧

子どもたちを人質にして、雲居雁を丸め込もうとする夕霧。

小助
かつての好青年ぶりは何処へやら・・・

お手本のような夫婦だった二人ですが、ここへきてその仲に亀裂が入ります。

あわや離婚か!?という場面ですが、決定的な出来事は起こらないまま、「夕霧」巻は幕を閉じます。

次巻の「御法」は紫上が主人公の物語です。

『源氏物語』「夕霧」の主な登場人物

夕霧

29歳。落葉の宮との結婚に盲目的になる。

雲居雁との仲は最悪で、恋愛なんてするもんじゃないと思う。

落葉の宮

夕霧の接近を煩わしく思い、彼を頑なに拒む。

母の一条御息所が亡くなり、夕霧を恨むが、彼を頼って生きていくほかないことを悟る。

一条御息所

病がちとなり、娘である落葉の宮の元から離れて過ごす。

夕霧への勘違いと手紙のすれ違いで、誤解が解けないまま亡くなる。

雲居雁

落葉の宮に嫉妬するも、夕霧への愛情が消え失せたわけではない。

しかし辛い気持ちを抑えることができず、実家へと帰ってしまう。

藤典侍

光源氏の従者・惟光の娘で、夕霧とは愛人関係にある。

この巻で夕霧との間に5人の子どもがいることを明かされる。

光源氏

夕霧を諌めようとするが、自分が言っても無駄だと判断して、結局は介入しない。

深い思慮を備えたその態度からは、かつての桐壺帝を思わせるものがある。

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