又吉直樹

【小説】又吉『劇場』の考察&感想!タイトルの意味や主人公の内面まで!

2019年9月12日

『劇場』とは?

『劇場』は、『火花』に次ぐ又吉直樹さん二作目の作品。

ダメな主人公・永田と健気な優しさを持つ年下の沙希。二人の恋愛を描いた物語です。

ここでは

  • 『劇場』をこれから読みたいと思っている人
  • どんな物語かざっくりと知りたい人

を対象に、作品の見どころポイントと感想を書いています。

ネタバレ記事では無いので安心してください。それではみていきましょう。

・-概要-

主人公 永田(職業・演出家)
物語の
仕掛け人
沙希(恋人)
主な舞台 東京
時代背景 現代
作者 又吉直樹

-『劇場』の見どころ-

あらら本店がおすすめする見どころポイントは3つあります。

  1. 『火花』では描かれることの少なかった主人公の内面
  2. 『劇場』というタイトルが含む意味
  3. 過去作とのクロスオーバー

内容に踏み込むともっと色々な見どころがありますが、あらら本店はこれから読みたい人を尊重します。

とはいえ、軽い紹介になってしまわない程度には踏み込みます。それではみていきましょう。

・ポイント1 『火花』では描かれることの少なかった主人公の内面

ひとつ目の見どころは「主人公の内面」です。

前作の『火花』は、先輩・神谷の「伝記」という構成のため、主人公の心理描写が比較的少ない物語でした。

しかし、『劇場』は主人公の内面が前面に出ていて、より濃い一人称視点の面白さがある作品になっています。

私小説が好きな人におすすめの作品です。

・ポイント2 『劇場』というタイトルが含む意味

この作品のタイトルは『劇場』です。

これは、主人公の職業が劇の演出家であることに関係していると同時に、作品自体が“劇場”になっているという側面もあると思います。

物語は主に、主人公の恋人である沙希の家で展開されていきます。

『劇場』はこの「沙希の家」を通して、変わっていくものと変わらないものが描かれます。

つまり『劇場』は、

「家」という”劇場”を介して、二人の恋人の姿が描かれた作品

であるとも読めるのです。

この劇場で展開される物語はどうなっていくのでしょうか?

それはぜひ本書でご覧下さい。

・ポイント3 『火花』とのクロスオーバー

3つ目のポイントは、『火花』とのクロスオーバーです。

ここでいうクロスオーバーとは、

作者が別の作品で登場させた人物を他作品で登場させること

を指します。

あの場面の人がこの人たちなのか!となって、物語に興を添えます。

分からなくても問題ありませんが、『火花』を読んだ人にとっては嬉しいサプライズでしょう。

 

以上3つが、あらら本店のおすすめする見どころポイントでした。

  • 劇場を読んでみたいけど、メインストーリー以外にどんなところが面白いのだろう?

と思っている方の参考になれば幸いです。

最後は個人的な『劇場』の感想をどうぞ。

-『劇場』の感想-

要するに主人公はやばい奴だ。劇団のみんなもどこかやばい奴が多い。『劇場』はやばい奴らで構成されている。

でも人間ってみんな、ふたを開けてみれば、そんなもんなんじゃないかという考えが頭をよぎる。

多くの場合、そのふたは固く閉ざされているか、下手をすればふたなんて無い素振りをしている。

けれど、又吉さんはそのふたをどんどん開けて、「見て!こんな中身ですよ!」と容赦なく晒してくるのだ。

怖いもの見たさ。

見なくてもいいものを、人は見たくなってしまう。

『劇場』ではそうした人間を背景に、純度の高い恋愛物語が平行して描かれる。

恋人の沙希ちゃんは、控えめに言ってもかなり可愛い。

どこか純真さを持っていて、女の子はこうであってほしいという男性の願望を体現したような存在だ。

やばい彼氏と天使の彼女。

そんな二人の物語を、僕達はそっと覗かせてもらうのだ。

以上、『劇場』のあらすじと考察と感想でした。

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