哲学とは?
哲学とは、この世界の真理を解き明かそうとする学問のことです。
「哲」には「あきらかにする」という意味があります。
- 人間とは何か?
- 世界はどうやってできたのか?
- 生とは何か?死とは何か?
人類はとても長いあいだ、こうしたことを考え続けてきました。
時代によって違いますが、その答えは神話や宗教、哲学や自然科学が提示しています。
例
- 神話=世界は神様が創ったんだよ!
- 哲学=全てのものは水でできている、全てのものは原子からできているetc....
- 自然科学=世界はビッグバンによって生まれたのさ
哲学史を知ることは、同時に歴史を知り、その時代に生きる人々の価値観を知ることでもあります。
この記事では、哲学の始まりから現代の哲学まで、思想を辿りながら解説していきます。
哲学の始まりについて
哲学の思想は、大きく下記のような流れで進んできました。
- 神話時代(〜BC700年頃):神話時代=世界は神様が創った!
- 古代哲学(BC650年頃〜):哲学の始まり=まさか神様が創ったはずはない。何かがあるはずだ
- 中世哲学(0年頃〜1550年頃):キリスト教の始まり・信仰時代=やっぱり世界は神様が創ったんだ
- 近代哲学(1550年頃〜):ルネサンス&宗教改革以後=神様以外でも世界のことを説明できるよ!
- 近現代哲学(1800年頃〜):革命と自然科学=哲学は限界です。認識不可能を認めましょう
- 現代の哲学へ(1900年頃〜):自由意志は存在しない&神は死んだ&言葉が思想をつくる
面白いことに、哲学が始まるタイミングは西洋も東洋もほとんど変わりません。
時代が下ると、それぞれの地域でキリスト教やイスラム教、仏教やヒンドゥー教などが発展していくため、思想の時代差は出てきますが、哲学者が考えつくことは似たようなものでした。
次からは歴史的な出来事や有名な哲学者・思想家の紹介とともに、哲学史の始まりを解説していきます。
人類の誕生〜神話時代:20万年前〜BC700年(2700年前)
今の人間(ホモ・サピエンス)は、約20万年前にアフリカで誕生しました。
それから10万年前にはアフリカを出て世界中に拡散し、1万年前の温暖化をきっかけに農耕生活を始めます。
この小麦はあとどれくらいで収穫できるのか、次に雨が降るのはいつ頃か?
人類は未来を予測しようと自然を観察し、月の満ち欠けや太陽の周期、水位の変化などから「暦(こよみ)」の概念を生み出しました。
今から約5000年前にはメソポタミアで太陰暦(月の満ち欠けで周期をはかる暦)が、約4000年前にはエジプトで太陽暦(太陽の周期で一年をはかる暦※エジプトでは水位で360日を測定した)が使われていたことが分かっています(桜井邦朋『新版 天文学史 』)。
農耕と暦によって人々の暮らしが安定し始めたのと同時に、人々は世界のことを考え始めます。
- この秩序だった世界はなんだ?
- この世界の法則は誰が決めたのか?
- 私たちはなぜ死ぬのか?
- 死んだ後はどうなるのか?
こうした問いに、最初は神話が答えました。
「どうして雷は光るの?」「それは神様が怒っているからだよ」
神話の始まりです。
大きな文明には必ず神話があり、分からないことを答える役割を担っていました。
神話の時代は約2700年前(BC700年頃)まで続きます。
哲学の始まり:BC650年(2700年前)〜0年
BC1200年に作られ始めた鉄器が普及すると、農耕の生産性がグッと上がり、人々の暮らしは豊かになりました。
温暖化がより一層進み、作物が実りやすくなったこともきっかけです。
このときに、自分では働かない富裕層(有産階級)が増えはじめます。
彼らはあそびに財産を使い、学者などを囲って農耕以外の仕事もさせました。
その結果として知識層が増え、のちの哲学者ヤスパース(1883-1969)によって「枢軸の時代(BC800年〜BC500年頃)」と表現された知の大爆発が起こります。
哲学の始まりです。
西洋では、タレス、ピュタゴラス、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなどが。
東洋では、ブッダ、孔子、マハーヴィーラや老子などが生まれています。
神話からの脱却
最初期の哲学者たちは、「この世界はどうやってできているのか?」という問いに様々なアプローチをしています。
- タレス:万物の根源は水である
- エンペドクレス:万物の根源は火・水・空気・土である
- デモクリトス:万物の根源は原子である
- ピタゴラス:世界の法則は数で成り立っている
- 中華思想(陰陽五行説):陰と陽の元素が交わり5元素(木・火・土・金・水)が生まれ、これが関係しあって世界を動かしている
中には核心をつくような視点もありますよね。
まとまらない意見とプロタゴラスの「相対主義」
しかし、当時は彼らの考えを証明することが難しかったので、様々な主張が飛び交うだけで、「これが真理だ!」とはなりません。
「この世は水で出来てるんだよ!」
「いやいや、原子で出来てるんだよ!」
「いやいやいや、神様が作ったんだって!」
農耕の発達によって、当時は人の行き交いも多くなり始めていました。
異なる土地の人々が出会うと、信じている神様が違ったり、言い伝えが違ったりして、「え?俺の信じていたことは嘘だったの?」「一体何が本当なんだ?」となります。
そんななかで出てきたのが、プロタゴラス(BC490頃〜BC420頃)という哲学者です。
彼は「相対主義(この世に真理なんてなくて、人それぞれなんだよ)」という考え方を説きました。
今から約2500年も前の考え方ですが、この相対主義はまわりまわって現代では主流の価値観となっています。
たとえば現在世界的に評価の高いアドラー心理学も、相対主義の考え方を応用することで、自分と他人を比較せず、皆が幸せなまま目的を達成する態度を推奨しています。
西洋哲学の父:ソクラテス
哲学史に戻りましょう。
そんな相対主義に反対したのが、哲学の父とも言われるソクラテスです。
彼は道ゆく人々に声をかけまくり、対話をすることで相手に何も分かっていないことを悟らせる啓蒙活動を行っていました。
かなり迷惑なおじさんです。
相対主義とか言ってるけど、本当は何も知らないよね?
もしかしたらきちんと考えていないだけかもよ?
だからさ、一緒に考えようぜ!
「自分は全てを知ることなんてできない。知ったかぶりはやめよう」という前提から、知るために深く考えていくことが大切だと説いた人物でした。
俗にいう「無知の知」です。
それゆえ人から嫌われて、殴られてボロボロになって帰ってくることも少なくなかったといいます。
現代では有名なソクラテスですが、実は彼が書き残した著作は一つもありません。
ソクラテスの哲学や人物像は、後述するプラトンという哲学者がまとめたものです。気軽に読めるものには『饗宴』や『メノン』があります。
たくさんの人を論破しまくっていたソクラテスは恨みを買い、最後には告訴されてしまいます。
そして「神を認めず、青年を堕落させた罪」により死刑を宣告されるのです。
このときの様子は『ソクラテスの弁明』にまとめられています。
ソクラテスの死刑時、プラトンは28歳でした。
このソクラテスを皮切りに、哲学はどんどん「考えること」を考えるようになっていきます。
ソクラテスを師と仰いだプラトン、その弟子であるアリストテレス。
この3人が、初期ギリシャ哲学の大家としてよく知られています。
現代の結論
ソクラテス以後の哲学は紆余曲折がありますが、結論から言うとウィトゲンシュタイン(1889年〜1951年)という哲学者が「思想ではなく言葉が全てだ」と論考したことで、ソクラテス的な哲学(「真理」を追求すること)の役目は終わったとする見方が一般的です。
また、ソクラテスの時代では謎だった「世界はどうやってできたのか?」についても、現代では自然科学が「ビッグバン」という答えを提示しています。
死後の世界については、現代でも宗教に答えを求める人と、宗派を問わず生と死は一続きであると考える人、あるいは無神論に立って「無」であると考える人に分かれています。
また、ここでは西洋哲学を中心に解説してきましたが、ブッダや孔子など、東洋でも優れた哲学者が誕生し、