『ゲド戦記』原作との違いを紹介!
この記事では、ジブリ版『ゲド戦記』の「原作との違い」を紹介します。
この記事を読めば、ジブリ版だけのオリジナルな設定や、原作にしかないストーリーなどを知ることができます。
・ジブリ版と原作との8つの違い!
さて、早速ですが、ジブリ版と原作との違いを大きく8つにまとめてみました。
- 剣の入手方法
- 母親の設定
- ゲドとの出会い方
- アレンのキャラクター像
- 物語の舞台設定
- アレンとテルーの関係
- クモとの場面
- 影の設定
こうした点が、原作との大きな違いになっています。それでは順番に見ていきましょう。
1.剣の入手方法
まずは剣の入手方法の違いについてです。この剣はセリアドの剣といって、アレンの王家に代々伝わる由緒正しい剣です。原作では、世界が変化した原因を突き止める旅へ出るアレンに、父親である国王がセリアドの剣を持たせます。
その一方で、ジブリ版ではアレンが父親である国王を殺して、強引に剣を奪っていくんですね。つまり、原作では剣が父から子へと継承されているのに対して、ジブリ版では剣を強奪し、継承を拒んだ形となっています。
アニメ『ゲド戦記』は、宮崎駿監督の息子である宮崎吾朗監督の初作品です。「父親殺し」の設定もジブリ版オリジナルなので、こうしたところからは、「宮崎駿のジブリを継承するわけではないぞ」という宮崎吾朗監督の意思表示のようにも、個人的には思います。
2.アレンの母親の設定
次に、登場する母親の性格も少し違っています。原作では子ども思いの優しい母親像が描かれているのに対して、ジブリ版では子どもに対して冷たい態度の母親像になっています。そのため、原作にはアレンの故郷に居場所がありますが、ジブリ版ではアレンの居場所がなく、もし故郷に戻るのであれば、一度父親殺しのけじめもつけなければいけません。
このように、ジブリ版のアレンには、物語が終わったあとも解決すべき問題が残っています。こうした家庭環境の違いは、ゲドとの出会い方の違いも生んでいます。
3.ゲドとの出会い方
原作では、世界がおかしくなってきた原因を探るため、エンラッドという国の王が、息子であるアレンを大賢人のもとへ遣わします。そしてアレンは大賢人であるゲドと出会い、世界が変化した理由を突き止める旅に出るのです。
一方ジブリ版では、国王である父親を殺したアレンが家から逃げ出して、目的のない逃亡の旅をします。その途中に偶然ゲドと出会い、一緒になって旅をするという物語となっています。
4.アレンのキャラクター像
こうしてみると、原作ではアレンが、大賢人と旅をすることを自ら選択している能動的な人物であることが分かります。
対してジブリ版のアレンは、ことの成り行きで大賢人と旅をしており、自ら選択しない受動的な人物として描かれています。このあたりのアレンの人物像の違いも、原作とは全く違うところです。
5.物語の舞台設定
5つ目は、物語の舞台の違いです。原作の『ゲド戦記』は、シリーズを問わず世界中を行き来して、それぞれの島や海の上で繰り広げられる冒険が特徴的です。
船の移動シーンも多く、ジュール・ヴェルヌの『80日間世界一周』にも似た雰囲気が感じられます。実際、原作ではクモを探して、世界の果ての果てまで船旅を続けます。
こうした冒険要素を大きく排除して、ワトホートという一つの島だけで物語が進むジブリ版の設定は、原作とはかなり異なる部分です。
クモもワトホートにいて、テルーとテナーの家もワトホートにあるので、舞台がとても縮小されています。ただ、原作にもジブリ版の舞台となっているワトホートのホート・タウンはあり、ハジアを売ろうとしてくる商人や、生地を売っている派手なおばちゃんも同じように登場します。
6.アレンとテルーの関係
6つ目の違いは、アレンとテルーの関係です。ジブリ版では同い年くらいで、少しの恋愛要素もあるのが特徴的です。
しかし原作では、2人の年は一回り以上離れており、ジブリ版に見られるような関係性ではありません。
原作のテルーは、ひどい虐待を受けて顔と腕に重度のやけどがあり、まわりの人間からはその容姿のために不気味がられているんですね。もちろん、テルー自身も人間に恐怖心を抱いています。ただ、アレンにだけは少し心を開くなど、恋愛関係ではないものの、特別な信頼関係ではあります。
7.クモとの場面
クモとの対決シーンも全体的に違っています。そもそも、ジブリ版ではクモが何を企んでいたのかあまり明確ではありません。
簡単に説明しておくと、クモは永遠の命を得ようとして、世界の均衡を大きく傾けてしまうような魔法をかけたんですね。それで世界が変になってしまったので、ゲドたちが世界を元に戻そうとクモと対決するわけです。
ジブリ版ではアレンがメインとなって、テルーとともに戦います。一方で、原作ではゲドがメインとなってクモと戦い、アレンや竜も参戦します。対決の場所も大きく異なるので、クモとの対決シーンは原作とかなり違っている部分です。
8.影の設定
最後になりますが、アレンに迫ってくる分身の設定も、原作と異なるポイントです。
原作の第一巻「影との戦い」は、ゲドがゲド自身の影と戦うストーリーになっています。その設定を、ジブリ版ではアレン当てはめて物語を作っているんですね。
また、ジブリ版では影ではなく、実は光が追いかけてきていた、という設定が付け加えられていたり、アレンが分身を受け入れるのは、テルーという他者の存在のおかげだったりします。原作をリスペクトしながらも、現代的なテーマを織り込んでいるところは、ジブリ版ならではだと思います。
以上、ジブリ版『ゲド戦記』と原作の8つの大きな違いでした。