源氏物語

源氏物語「明石」あらすじ&解説!霊体・桐壺帝の奔走から若紫の嫉妬まで!

2022年4月19日

『源氏物語』第13帖「明石」のあらすじ

光源氏:27歳3月~28歳秋

嵐が続くなか、故・桐壺院が夢に現れる

光源氏27歳の3月。

落雷で住まいの一部が焼け落ち、光源氏がやむなく台所でうたた寝をしていたところ、夢に故・桐壺院が現れます。

「こんなところにおらず、神の導きでこの浦から立ち去りなさい。朱雀帝にも話を通さねばならない」と彼は言い、姿を消します。

須磨から明石へ

その日、須磨の浦に明石入道の使いが来て、舟に乗れと言います。

なんでも、明石入道にも夢のお告げがあって、光源氏を向かいに来たと言うのです。

彼は舟に乗って須磨をあとにし、明石の浦へと向かいます。

明石の君との出会い

明石入道の邸はたいそう趣があり、都にも劣らない美しさでした。

光源氏は、はじめて心を落ち着かせられる場所へとやってきたのです。

明石入道と懇意にしているうちに、光源氏は娘の明石の君と夜を過ごすようになります。

都に相次ぐ凶事

一方の都は、朱雀帝の夢にも故・桐壺院が現れた3月頃から、相次いで凶事に見舞われていました。

太政大臣(右大臣)は亡くなり、弘徽殿太后は物の怪に憑かれ、朱雀帝は眼を患います。

これも光源氏を追いやったからだと考えた朱雀帝は、母・弘徽殿太后の反対を押し切って、光源氏を京に呼び戻します。

急な帰京の決定

急な帰京の便りを受け取った光源氏。

嬉しくもありますが、この地で出会った人との別れも寂しく感じます。

わけても、懐妊した明石の君を置いて去ることは、何にも増して心痛むことなのでした。

久しぶりの都

28歳の夏、光源氏は2年と数ヶ月ぶりに京へと戻ってきます。

剥奪されていた官位は戻され、かつての権力を取り戻し、従者共々喜びにあふれます。

若紫は前にも増して美しくなっており、光源氏はしみじみと愛おしく思うものの、若紫の方では明石の君のことで恨めしさが募るのでした。

『源氏物語』「明石」の恋愛パターン

光源氏―明石の君

  • 光源氏:寂しい浦住まいの独り寝に、明石の君というささやかな慰みを見出す
  • 明石の君:身分違いの恋に引け目を感じながらも、源氏の子を宿す

『源氏物語』「明石」の感想&面白ポイント

霊体・桐壺帝のパワー

第13帖「明石」で眼を見張る活躍をするのが、すでに亡くなった光源氏のパパ・桐壺帝。

彼は霊体となって、光源氏のために奔走します。

桐壺帝
源氏よ、なんでこんな惨めなことになっとるの。ちょっとわしが朱雀ちゃんに話つけてくるわ

彼がこう言って去ると、次々と不思議なことが起こるのです。

  • 光源氏は侘しい邸から、明石入道の立派な住まいに導かれる
  • 右大臣が急死する
  • 弘徽殿女御が物の怪に憑かれる
  • 朱雀帝が目を患う
要するに光源氏は幸せになり、光源氏を排斥しようとしていた右大臣側は不幸になったのです。
小助
全て霊体の桐壺帝が行ったんだろう、と思わせるような書かれ方になっており、ファンタジックな源氏物語を楽める箇所でした。

須磨へ行き、このまま落ちぶれてしまうのかと思われた光源氏ですが、パパの力で不遇の時代を乗り越えるんですね。

才色兼備で位も高く、何でも持っている光源氏。

そんな彼が、自力ではなく他力で人生を乗り越えていくところに、憎めないリーダー像が垣間見られます。

明石君の懐妊

「明石」の巻では、明石の君が光源氏の子を身ごもるんですね。

これまで色々な女性と関係を持ってきた光源氏ですが、子どもをもうけたのは3人目です。

  • 葵上との子・夕霧
  • 藤壺との子・冷泉帝
  • 明石の君との子・明石の姫君
全54巻中まだ13巻ですが、実はこの明石の姫君との子が、光源氏にとって最後の子どもとなります。

この3人の子どもたちが、どのように光源氏の人生に関わっていくのか、その点が見どころになっていくんですね。

華やかさが戻ってきた源氏物語

朱雀帝からの宣旨がくだり、都に帰ることになってから、物語はどんどん明るくなっていきます。

「葵」巻あたりから下り坂だった光源氏の人生。

小助
いま思えば「須磨」の大嵐がピークだったんですね。

「明石」巻で京へ帰ると、光源氏一行はもとの華やかな官位を取り戻し、若紫とも再開し、敵対していた右大臣一派はほぼ壊滅状態。

ふたたび光源氏たちに春がやってきます。

正直すぎる光源氏

ただその一方で、若紫のジェラシーもしっかりと描かれています。

都に帰るなり若紫と感動の再会をして、彼女のほうも嬉しげな雰囲気のなか、光源氏はこともあろうか、明石の君のことをペラペラと話し出すんですね。

光源氏
いやあ、あいつはマジでいい女だったよ。別れが辛かったなぁ。。。ぐすん。

はい、バカです。大バカです。

久々に再会できた可愛い奥さんに会ったとたん、別の女性の話します?いろいろ台無しですよね。

その語りぶりから明石の君への想いの強さを感じ取った若紫は、恨めしげにこう言います。

「身をば思はず」

これは、以下の歌からの引用です。

「忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな」 『拾遺集』恋四・870
(忘れられた私の身はどうでもいいですが、私への愛を神に誓ったあなたが罰を受けて死んでしまうのが惜しいです)

百人一首にもなっているくらい有名な、痛烈な皮肉・恨みが込められている歌になっています。

たださすが光源氏、こんな若紫の言葉も「をかしうらうたく思ひ(おかしく愛しく思い)」聞いているんですね。やきもちか、可愛いちゃっちゃのぉ〜。というわけです。

この温度差。都へ帰ってきて楽しげな光源氏の様子と、会ってすぐ嫉妬で嫌な気分になる若紫の様子が対照的に描かれます。

小助
このあたりのバランス感が本当にうまくて、どんどん続きを読みたくなる仕掛けになっているんですね。

光源氏の須磨滞在は2年と数ヶ月でした。

人生の谷を乗り越えた彼ですが、次の「澪標」からはどのような出来事が待っているのでしょうか。

関連記事:「澪標」巻

『源氏物語』「明石」の主な登場人物

光源氏

27歳になった光源氏は、明石入道の導きで須磨から明石へ移る。

そこで明石の君と恋に落ちるが、翌年には急な帰京を果たす。

明石入道

光源氏と娘をくっつけようと努める。

田舎住まいにも関わらず風流な人。

明石の君

身分違いの恋に引け目を感じるも、源氏との子を宿す。

若紫

ひたすら源氏を想っている。

光源氏が帰京すると嬉しく思うものの、女をつくってきたことは恨めしい。

桐壺院の夢姿

光源氏と朱雀帝の夢に現れて、自身の遺言が果たされるよう取り計らう。

朱雀帝

母・弘徽殿女御の言いつけに背き、光源氏を京に呼び戻す。

夢に桐壺院が現れて以来、目を患って病がちである。

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