『バカなヤツらは皆殺し』のあらすじ・内容
ナディーヌはAV鑑賞が好きな女のコ。
お金をもらって性サービスをしながら生きている。
マニュは自由奔放で、クレイジーなことが大好き。ポルノ女優の経験もある。
彼女は思ったことをすぐに口にするタイプで、肝が据わっている。
そんな二人が偶然出会い、行き当たりばったりの旅が始まる。
旅の資金は殺して奪い、身体がうずくとセックスする。
同じ悲しみを背負いつつも、それを決して表に出すことなく、最後まで刺激を求め続ける。
フランスに衝撃を与えた、ウィルジニ・デパントのデビュー作。
・『バカなヤツらは皆殺し』の概要
物語の中心人物 | ナディーヌ、マニュ |
物語の 仕掛け人 |
フランシス、カメル |
主な舞台 | フランス |
時代背景 | 現代 |
作者 | ヴィルジニ・デパント |
『バカなヤツらは皆殺し』の感想
セックス、ドラッグ、リボルバー
「キモチよければいいじゃない!超快楽主義な女のコ2人が暴走する!セックス&バイオレンスなハードコア・ロードノベル」
帯の文句は過激で、しかもフランスの小説。(サドとかを連想しますよね)
主人公の女の子たちが起きているときは、
- 酒を飲んで酔っている
- ドラッグでキマっている
- 何かを食べている
- 人を殺している
- 男とセックスしているorオナニーしている
のいずれかで、ほとんど何も考えることなく、その場の思いつきで行動していきます。あとは寝てます。
舞台はフランスのマルヌからカンペールまで様々ですが、欧米のドラマや映画によくある「アウトサイド」な雰囲気が漂います。
本の帯だけを見ると、
的な内容かなと思っていましたが、そうではありません。
彼女たちは世界をクソッタレと思っていて、その背景には痛みがあります。
本書の面白さは、その痛みを倫理的・道徳的な立場から訴えるのではなく、女の子たちの衝動的なパッションを描くことで小説に落とし込んでいるところでした。
「暴走」ではない
帯の「超快楽主義な女のコ2人が暴走する!」という部分に引っ張られそうになりますが、内容的には彼女たちの暴走ではありません。
ナディーヌにはフランシスという男友達がいて、マニュにはカメル、ラドゥアンという男友達がいます。
ナディーヌとマニュが「暴走」にみえる連続殺人の旅をするのはその後から。
彼女たちは傷つき、どこに向けたら良いか分からない感情を抱きます。
というふうに、僕には思えました。
アウトサイダーな女の子たちの「痛み」
つまり本書は、
という快楽主義だけの物語ではありませんでした。
表面上はそうしたオブラートで包みながら、その実は女の子たちの「痛み」を描いている物語です。
その痛みを忘れるための装置として、
- 酒
- ドラッグ
- セックス
- 殺人
が用意され、それらに浸っているときだけ楽になれるのです。
一度だけ、ナディーヌが愛に揺られて、殺人をわずかに躊躇する場面がありました。
そこで浮かび上がる愛への渇望、そしてそれが叶わない破滅的な道のりと、その道を進む「無気力でいじけた気分」。
「愛」が、痛みを忘れて楽になるための装置リストには入らないということが、この場面では分かります。
こうした、
というかたちも、現代フランス的(ミシェル・ウエルベックとか)な感じがした小説でした。
のちの小説『キングコング・セオリー』や『アポカリプス・ベイビー』の原点とも感じられた作品です。
『バカなヤツらは皆殺し』の登場人物
○マニュ
ポルノ女優の経験がある女の子。思ったことを口にするタイプで、クレイジーな雰囲気がある。
○ナディーヌ
AV鑑賞が趣味の女の子。どちらかといえば内向的だが、衝動的に行動を起こす傾向がある。
○フランシス
ナディーヌの男友達。お金の問題があり、ドラッグもしている。ある事件を起こしてナディーヌを呼び寄せる。
○ラドゥアン
マニュの男友達で薬の売人。ナワバリで大きい顔をしすぎたため、同業者にリンチされる。
『バカなヤツらは皆殺し』を読んで分かること
- 現代フランスのアウトサイド
・物語のキーワード
セックス・暴力・銃・酒・ドラッグ・売春・ポルノ・復讐・友情・殺人・逃亡・犯罪・現代フランス