『源氏物語』第33帖「藤裏葉」のあらすじ
頭中将(内大臣)が折れて夕霧と和解する
頭中将(内大臣)は、ようやく夕霧と雲居雁の結婚を認める気になります。
6年間ものあいだ、一途に雲居雁を想い続けてきた夕霧は、かつて仲を引き裂かれた雲居雁の父・頭中将と和解します。
夕霧と雲居雁の結婚
晴れて結婚した夕霧と雲居雁は、幼い頃から同じ人物(大宮)に育てられたいとこ同士でした。
彼らはかつて一緒に過ごした三条邸(故大宮の家)を住居とし、二人で睦まじく暮らします。
紫上と明石の君が初対面し、明石の姫君が入内する
明石の姫君の入内の際、紫上の思し召しで、後見人が明石の君に変わります。
明石の君と明石の姫君親子は、8年の時を経て、一緒に住めるようになったのです。
紫上と明石の君の二人も初めて対面し、互いに人柄の良さを認め合うのでした。
六条院に行幸がある
40歳を目前にした光源氏を祝うため、六条院に行幸(帝のおでかけ)があります。
冷泉帝と朱雀院をはじめ、多くの高貴な人々が六条院に来て、昔のことなども思い出しながら、盛大な御賀となったのでした。
『源氏物語』「藤裏葉」の恋愛パターン
夕霧―雲居雁
- 夕霧:一途に思い続けてきた雲居雁とついに結ばれる
- 雲居雁:待ち侘びていた夕霧と一緒になる
『源氏物語』「藤裏葉」の感想&面白ポイント
「藤裏葉」巻は、
- 夕霧&雲居雁
- 明石の姫君&帝
の二組の結婚が描かれます。
夕霧は雲居雁と結ばれ、明石の姫君は東宮後宮へ入内します。
前巻までの玉鬘に続き、夕霧、明石の姫君と、光源氏の子どもたちが自分の人生を歩み出すのです。
ここでは、そんな夕霧と明石の姫君の結婚についてまとめました。
夕霧と雲居雁の純愛
「藤裏葉」巻の見どころは、なんといっても夕霧と雲居雁が結ばれる点です。
夕霧と雲居雁は幼馴染で、物心がついた頃からずっと一緒にいました。
夕霧の母・葵上は出産後すぐに亡くなったため、夕霧は祖母である大宮のもとで育ちました。
10歳になると部屋を別々にされ、その頃から悶々としていた夕霧は、隙を見ては雲居雁と会っていました。
しかし、そのことが雲居雁の父である頭中将に知られます。
その時の夕霧はまだ位も低く(六位)、女房たちにすら馬鹿にされるほどでした。
怒った頭中将は、夕霧と雲居雁を会わせない作戦に出ます。
▽そのあたりの詳しいことは「少女」巻で描かれます。
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源氏物語「少女」あらすじ&解説!夕霧と雲居雁の恋愛から、頭中将と惟光朝臣の対比まで!
頭中将が夕霧と雲居雁の仲を引き裂いてから、6年もの月日が流れました。
位も中納言にまで昇進し、縁談の話も方々からやって来ます。
そして頭中将は、当時のことを後悔するのです。
ですが、結果的に頭中将が夕霧と和解の場を設けます。
酔ったふりをする夕霧
雲居雁との仲を許された夕霧は、「今夜は気分が悪いので、一晩泊めさせてください」と頭中将に申し出ます。
しかし、これは夕霧の演技で、頭中将も分かっていながらこれに付き合います。
夕霧の位が上がったために、自分から折れてまで雲居雁を差し出す頭中将は、ヘタをすると滑稽にも感じられます。
しかし、メリットがあると判断すると、プライドすら投げ打って全力でチャンスを掴みにゆくハングリーな姿勢は、頭中将のしたたかさも表しているでしょう。
こうして雲居雁と夕霧は晴れて夫婦となり、昔一緒に育った大宮の家(二条邸)で、二人睦まじく暮らすのでした。
父の光源氏は色恋沙汰の多い人ですが、息子の夕霧は一途な純愛を貫き通す、対比的な恋愛が描かれています。
ただし、夕霧にも惟光朝臣(光源氏の信頼している従者)の娘・五節という人物がいます。
明石の君へ親権(後見役)を返す紫上
「藤裏葉」巻もう一つの見どころは、明石の姫君の入内です。
この場面では、
- 紫上と明石の君の初対面
- 明石の君と明石の姫君の再会
が描かれます。
入内する娘の付き添いは、基本的にはその母親が行います。
しかし、明石の姫君は紫上に育てられたので、このタイミングで明石の君に後見役を譲ることにしました。
紫上と明石の君は世間話をして仲を深め、互いの美点を心の内で称賛し合います。
そしてここからは、明石の君と明石の姫君と再会へと場面が移ります。
明石の君と明石の姫君の再会
明石の姫君が明石の君の手から離れ、紫上の家に養子に行ったのは8年前のこと。(第19帖「薄雲」巻)
そんな姫君に入内という形で再会できたことを、明石の君は涙を流して喜びます。
明石の君の身分が低いため、ほかの娘に付いている女房は悪口を言いますが、そんなことで曇るような明石の姫君の威光ではありません。
彼女は大変美しく、東宮(時期帝)にもしっかりと気に入られるのです。
こうして40歳を目前にした光源氏は、
- 秋好中宮(養子)→冷泉帝の后
- 玉鬘(養子)→髭黒大将の正妻
- 夕霧(実子)→雲居雁の夫
- 明石の姫君(実子)→今上帝の后
と、無事に子どもたちの身を固めることに成功します。
ちなみに『源氏物語』には「4部構成説」があります。分け方は諸説ありますが、「藤裏葉」が第2部のラストであるのはどの説も共通しています。光源氏の子育てが終わったこの巻は、物語の大きな節目だと考えられているわけです。
しかし、光源氏の人生はまだ続きます。
次の「若菜」巻では、光源氏の新しい妻・女三の宮が登場し、物語を波乱の渦に巻き込んでいきます。
『源氏物語』「藤裏葉」の主な登場人物
夕霧
18歳。雲居雁とついに結婚し、大宮の邸だった二条邸に住まう。
惟光朝臣の娘・五節とは関係がある。
頭中将(内大臣)
夕霧と和解するために席を設ける。
夕霧を雲居雁に会わせるため一芝居打つ。
雲居雁
20歳。夕霧を待ち続けたが、いざ目の前にすると恥ずかしい。
ともに育った二条邸で夫婦として住む。
光源氏
39歳。夕霧と明石の姫君の身が落ち着いて一安心する。
六条院に行幸があり、昔のことを思い出す。
紫上
31歳。明石の君と初対面し、彼女の行きとどいた身のこなしを認める。
葵祭を見学する。
明石の君
30歳。紫上と初対面し、彼女の優美さに正妻であることを納得する。
明石の姫君と再開し、付き添い後見役として宮中に入る。
明石の姫君
11歳。東宮後宮に入内し、東宮に気に入られる。
母である明石の君と8年ぶりに共に住む。
朱雀院
冷泉帝とともに、光源氏のいる六条院に行幸する。
かつての花宴を思い出して感慨に耽る。
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