小田嶽夫『城外』のあらすじ感想!主人公が感じた3つの疎外感とは?

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『城外』とは?

『城外』は第三回芥川賞を受賞した小田嶽夫の作品。

中国の日本領事館に勤める主人公の疎外感と、そこの下女である桂英との恋愛を軸に物語は進む。

ここではそんな『城外』のあらすじ・解説・感想をまとめた。

この記事を読んで分かること

  • 『城外』のあらすじ・概要
  • ・解説1 疎外感というテーマ
  • ・第三回芥川賞選評者の言葉
  • 『城外』の感想 ~疎外感と共感と愛の関係~



『城外』のあらすじ

主人公の重藤陽一は、25歳の年に中国坑州の日本領事館に赴任した。

彼はしばしばそこで外国人としての自分を感じ、特有の疎外感を覚えながら日々を過ごす。

そんな折り、身の回りの世話をする下女・桂英と密かな関係を持つようになり、そこに愛を見出していく。

しかし、中国国内で国民革命軍の動きが活発になり、南京事件が起こるに至って、重藤は日本に帰ることになる。

・『城外』の概要

主人公 重藤陽一
物語の
仕掛け人
桂英
主な舞台 中国
時代背景 1926~1927年
作者 小田嶽夫



-解説(考察)-

『城外』は、「疎外感」をテーマにした作品だ。

その疎外感は様々な方面から描かれ、作品のなかで立体的に浮かび上がってくる。

ここでは作品で描かれる、

  1. 外国人としての疎外感
  2. 社会からの疎外感
  3. 勃興するイデオロギーからの疎外感

三つの疎外感を解説していく。

・疎外感というテーマ

1.外国人としての疎外感

この疎外感は外国に赴任した人間が当地で感じる特有のものであり、中国に赴任した主人公も同じような感情になっていることが描かれる。

彼は決してのけ者にされているわけではなく、中国人に囲まれて歓談をしているときなどに、ふと自分だけ仲間はずれのような気になる。

こうした疎外感は想像出来なくもないだろう。

2.社会からの疎外感

主人公は自分を作家として生きる人間だと思っており、野心的に出世しようと思わない。

社会に出るときには偽りの仮面を付け、本体の自分との乖離をことあるごとに感じている様子が描かれる。

そんな主人公は、社会から自分という人間の疎外を感じていると言えるだろう。

3.勃興するイデオロギーからの疎外感

当時、世界的な盛り上がりを見せたマルクス主義は、多くの人間に革命の火を灯させた。日本の文学界もそれに波及して、プロレタリア文学が勃興する。

主人公はこのイデオロギーの隆盛に興奮するものの、身をもって運動に関わろうとする熱情までを持つことは出来ない。

こうしたイデオロギーからの疎外感も、この作品では描かれている。

4.+α

以上三つの精神的な疎外感に加えて、主人公が勤務する領事館の位置が、

  • かつてあった城門のすぐ外

にあることも、主人公の疎外感を象徴しているといえる。

つまりタイトルの『城外』は、主人公の疎外感を表す物質的なアイコンとして機能していることになる。

このようなことから、小田嶽夫の『城外』は主人公の疎外をテーマにした作品であると考えられるのではないだろうか。



・第三回芥川賞選評者の言葉

第三回芥川賞を受賞した『城外』だが、他の作家からはどのような評価を受けたのだろうか。

ここでは芥川賞委員会の四名の選評をピックアップし、『城外』に付けられた評価を見ていく。

選評者の言葉は全て文藝春秋『芥川賞全集一』から引用する。

・瀧井孝作

文章のしっかりしている点で一番感心した。それに情夫にたいする愛情もなかなかよく描けているようだ。

・菊池寛

現代物の中では、一番自分の心に残った。

・佐佐木茂索

「城外」の当選はやや幸運の感なくもなし

佐藤春夫

少々清新な味に欠けるもので、この点受賞を躊躇した向もあったけれど十年この道に努力した跡はさすがに顕著で老成した味の尊重すべきものを思う。

こうしてみると、『城外』の評価はやや風当たりがきついように感じられる。

第三回の芥川賞は二名の同時受賞で、もう片方が鶴田知也氏の『コシャマイン記』だった。

『コシャマイン記』の完成度は高く、『城外』がその影に埋もれた感は否めない。

とはいえ瀧井孝作は『城外』を「一番感心した」といい、菊池寛も「現代物の中では、一番自分の心に残った」と評価している。



-感想-

・疎外感と共感と愛の関係

『城外』が面白いのは、主人公が感じる疎外感の中で、束の間ではあるが「真実の愛」のようなものを得る所だと思う。

下女の桂英とその子ども月銀。彼女たちを愛する主人公の幸福感は、この物語の見どころの一つだろう。

主人公は自信の幸福についてこう述べる。

私自身はその期間の自分の幸福をそれほど明確に意識していなかったが、私が長い生涯を送ると仮定して、その旅の最後の終りに過ぎてきた跡を追懐して見る時があるとするならば、その一と時の生活は崇高な燦爛たる金色を放って私の眸を眩暈させるかも知れない。

小田嶽夫『城外』文藝春秋,p103

彼は桂英に対して「個人的な愛を超えたヒューメンな愛」を感じていた。

それが永遠には続かないとしても、それを感じた者は幸福だと言えるだろう。

現代の人々は疎外感から目を背け、「共感」を掲げるコンテンツに逃げている。

共感があれば孤独を騙すことが出来るから、愛の必要性をあまり感じない。「ヒューメンな愛」などもってのほかだ。

そうした意味で、この『城外』には僕たちの潜在的な問題が描かれていると言えるかも知れない。

小田嶽夫:芥川賞全集一(文藝春秋)単行本 – 1982/2/19

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