織田作之助の代表作!『夫婦善哉』解説・あらすじ&感想まとめ!登場したお店も紹介!

2019年10月8日

織田作之助の代表作『夫婦善哉』とは?

『夫婦善哉』は大阪のリアルな情緒を背景に、蝶子と柳吉二人の関係が描かれる物語です。

織田作之助の代表作で、自由軒のライスカレーが作中に出てくるなど当時の大阪の様子がありありと描かれています。

ここでは、2007年に発見された『続 夫婦善哉』も合わせて『夫婦善哉』とし、あらすじ・解説・感想までをまとめました。

『夫婦善哉』のあらすじ

大阪にある天ぷら屋の種吉とその妻お辰との間に蝶子は生まれる。

大きくなると器量も良くなり、蝶子は芸者の道で生きることを決意するが、馴染みの客である柳吉に惚れ込む。

柳吉は妻子のある身でありながら、蝶子と駆け落ちをする。

金遣いの荒い柳吉と一緒になり蝶子は苦しむが、持ち前の器量と快活さで芸者や商いをしてなんとか生きていく。

柳吉の妻は肺を悪くして死に、父は二人の関係を認めないまま死んでしまう。

残された柳吉の娘は蝶子のことを悪く思っているため、柳吉の妹が面倒を見ることになる。

二人は新天地を求めて別府へ行き新しく商いを始め、年が経つと小さく成功したと言えるくらいになった。

柳吉の娘も大きくなって結婚することになり、二人で式に出てくれと手紙をもらう。

蝶子は初めて二人の関係を認められ、うつむいて泣いた。柳吉51歳、蝶子39歳の年だった。

・『夫婦善哉』の概要

主人公 蝶子
物語の
仕掛け人
柳吉
主な舞台 大阪→別府
時代背景 大正~昭和初期
作者 織田作之助

-解説(考察)-

・「商人の成功譚」というサブストーリー

『夫婦善哉』で特徴的なのは、繰り返し行われる商いの変更です。

二人は作中で、計7回も商いを変えています。

  1. 高津神社坂下の剃刀屋
  2. 飛田大門前通りの関東煮屋「蝶柳」
  3. 同じく飛田で果物屋
  4. カフェ「サロン蝶柳」
  5. 別府中町で化粧品・刃物の店「大阪屋」(『続 夫婦善哉』)
  6. 別府流川で規模拡大の「大阪屋」(『続 夫婦善哉』)
  7. 同じく別府流川で貸間屋(『続 夫婦善哉』)

これに加えて、柳吉は剃刀屋の店員を、蝶子はヤトナ(臨時雇いの仲居)をしていました。

こうしてみると『夫婦善哉』という作品は、失敗しても諦めない大阪人的な商人の気風が読み取れます。

蝶子と柳吉の関係をメインで描きつつ、サブストーリーでは商人としての成功譚でもある作品です。

『続 夫婦善哉』と合わせて読むと、そうした内容がより強く出ています。

・『夫婦善哉』に出てくる大阪の店9軒

『夫婦善哉』では実際にあった店がいくつも描かれます。

具体的な店舗名を出すことで、作品にリアリティが出ています。(村上春樹が作品に具体的な車種名やアーティスト名を出すテクニックと同じです。)

ここでは『夫婦善哉』に出てくる店舗をまとめました。確認できた9店舗を解説していきます。

1.「しる市」のどじょう汁と皮鯨汁

戎橋筋そごう横にあった「しる市」

どじょう汁と皮鯨汁はどちらも味噌で味付けをした汁ものです。

どじょうやくじらなどのダシが酒の後に染みそうな一品。

2.「出雲屋」のまむし

道頓堀相合橋東詰にある「出雲屋」

鰻が上に乗っかっているだけの鰻丼は関東のスタイルのようで、関西ではご飯で鰻を挟んでいる鰻丼のことを「まむし」と言うようです。

3.「たこ梅」のたこ

「たこ梅」は現在もあるお店で、日本で一番古いおでん屋です。

『夫婦善哉』に出てくる「たこ」は、たこ梅の名物である「たこ甘露煮」のことを指しています。

以下がお店のホームページです。すてきなお店の様子がサイトからも分かります。

4.「正弁丹吾亭」の関東煮

法善寺境内にある「正弁丹吾亭(しょうべんたんごてい)」は、「たこ梅」と同じく現在も続く老舗割烹です。

関東煮とはおでんのことですが、関西の「おでん」とは味付けが少し違います。

当時は庶民向けのお店だったようなので雰囲気は変わっているかもしれませんが、おいしいことで地元でも有名なお店です。

5.「寿司捨」の鉄火巻と鯛の皮の酢味噌

「寿司捨」は屋号からも分かる通りの寿司屋で、なんば千日前の常盤座(劇場・映画館)横にあったようです。

鉄火巻きや鯛の皮の酢味噌のチョイスが、柳吉のB級グルメ好きを表しています。

6.「だるまや」のかやくご飯と粕じる

「寿司捨」の向かいにあった「だるまや」

かやくご飯と粕汁といった組み合わせは当時でも安かったようです。

7.「おぐらや」の山椒昆布

柳吉が自分で煮る昆布を自慢げに、

「おぐらや」で売っている山椒昆布と同じ位のうまさになる

と言う場面のお店です。

そんな「おぐらや」は現在もある昆布の老舗店。作中の山椒昆布は今もなお店の定番商品です。

8.「自由軒」のライスカレー

「自由軒のラ、ラ、ライスカレーはカレーを御飯にあんじょうま、ま、ま、まむしてあるよって、うまい」

楽天地横にある「自由軒」のライスカレーは、現在も大阪の名物として有名です。

楽天地とは大正時代の大阪を代表するハイカラな名所で、現在の難波にありました。

大正的なハイカラな様子が、この一文で表現されています。

9.「夫婦善哉」のぜんざい

本作のタイトルにもなっている、大阪法善寺にある甘味処の「夫婦善哉」

現在でも形は残っており、大阪に行けば夫婦善哉のぜんざいを食べることが出来ます。

織田作之助の作品のおかげで、当時の夫婦善哉は大繁盛したようです。ふたつのお椀に入ってくる善哉は下の公式サイトから見ることが出来ます。

 

以上が、『夫婦善哉』に出てくる大阪の店9軒です。

いずれも当時の大阪の様子や雰囲気をつかむのに重要な役割を果たしています。

約100年後の現代に生きる私たちは想像することしか出来ませんが、今でも残るお店や商品を見て、作品の読みを深めてみてはいかがでしょうか。

-感想-

・主人公は誰だ?

初めて『夫婦善哉』を読んだとき、種吉(蝶子の父親)が主人公じゃないのか!となりました。

冒頭から種吉の描写が続くので、同じように思った経験のある方も多いはず。

しかし織田作之助のほかの作品を読み進めているうちに、これが彼の作風なのだということが分かりました。

彼自身、「或意味で私の処女作」と言った『雨』という小説も同じように主人公の入れ替わりがあり、そうした手法や大阪の情緒が、彼の作品をより魅力的にしています。

ここでは織田作之助やほかの作家の作品についても考察や感想などを書いているので、無頼派あたりの小説家が好きな人などはぜひ見てみて下さい。

以上、『夫婦善哉』のあらすじから感想でした。

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