源氏物語「蓬生」の簡単なあらすじ&解説!末摘花が再登場!光源氏を一途に待ち続けた結末とは?

『源氏物語』第15帖「蓬生」のあらすじ

光源氏:28歳〜29歳夏

須磨から帰ってきた光源氏の物語を、末摘花視点で描く「蓬生」巻。

時系列的には「明石」巻の続きとなるため、「澪標」巻よりも前の話となります。

零落する末摘花

7,8年前に光源氏と出会い、彼の世話になることでなんとか暮らせていた末摘花。

しかし、光源氏が須磨へ流されると暮らしぶりは悪化し、あばら家も草がぼうぼうに生えてしまう始末。

周りの親類からは見下されつつも、父母から受け継いだこの家だけは守ろうと、ひとり侘びしく暮らしていました。

光源氏が須磨から帰京〜しかし忘れられている〜

2年の月日が流れ、光源氏が須磨から帰京すると、末摘花は期待に溢れます。

ですが悲しいことに、光源氏は一向に末摘花のもとを訪れる気配がありません。

返り咲いた彼の華やかな噂を聞くたびに、彼女は「私を忘れてしまったのだろうか・・・」と絶望に打ちひしがれます。

それでも信じ続けて待つ末摘花

周りからはバカにされ、お付きの人もおらず、叔母は何度も「田舎へ引っ越そう」と勧めてきます。

それでも末摘花は光源氏を待ち続けました。

彼女は誇り高く生きており、それゆえに待ち続けることしかできなかったのです。

光源氏との再会

光源氏が帰郷してから8ヶ月後のこと。

彼は花散里を訪ねに行く途中で、末摘花の家の前を通りかかり、彼女のことを思い出しました。

ついでだからと家を尋ねると、そこには彼を一途に待ち続けた末摘花がいます。

彼女の志に心を打たれた光源氏は、末摘花を末永く庇護下に置こうと心を決めます。

侘びしかったあばら家は生気を取り戻し、彼女は光源氏の二条東院に住まうことになったのでした。

『源氏物語』「蓬生」の恋愛パターン

光源氏―末摘花

  • 光源氏:須磨から帰京するも、末摘花のことは家の前を通るまで忘れてしまっている
  • 末摘花:光源氏が須磨へ行くとともに零落するが、彼を信じて待ち続ける

『源氏物語』「蓬生」の感想&面白ポイント

末摘花の再登場

「蓬生」で登場する末摘花は、すでに第6帖で登場しています。

簡単に内容をおさらいすると、光源氏と頭中将が一人の女性をめぐって競い合い、光源氏が先に逢瀬までこぎつけるものの、朝に彼女の顔を見ると驚くほど醜くかったというお話です。

関連記事:『源氏物語』「末摘花」のあらすじを簡単に!醜い末摘花の容姿から大輔命婦の役割まで!

源氏の若かりし頃の失敗談であり、完全に笑い話として読める短編小説風の1帖なのですが、その後日譚となるのが今回の「蓬生」。

正直、末摘花のことなんてすっかり忘れていたので、突然の再登場にとても驚きました。

光源氏に忘れらていた彼女の侘しい邸宅には、びっしりと蓬などの雑草が生い茂っていて、人に忘れらている哀しいありさまを象徴的に表しています。

それは僕たち読者の頭の中も同じで、「あ〜、いたいた。末摘花なんて人もいたよね」と、長い時の流れを感じさせられる一瞬です。

6帖で描かれる末摘花の邸宅はすでに荒廃しており、あれから随分と時が経ったので(約10年)、庭に蓬などが生い茂っている様子は容易に想像できます。

源氏物語に親しんでいる人であれば、長い間忘れていてふとした時に思い出すことを、「記憶に蓬が生えていた」と表現しても通じそうな、そんなイメージの連なりが起こっている面白いポイントです。

末摘花の容姿が生み出すイメージのもつれ 〜容姿ではなく「想い」の大切さ〜

さて「蓬生」の巻では、男を一途に待ち続ける女性(末摘花)の姿が描かれます。

末摘花が登場したので「またユーモラスな話なのかな?」と思いきや、健気な女性を主題とした叙情的な話です。

気高く一途な女性がひとりの男を待ち続けている。

その構図には心打たれるものがありますが、読者は末摘花がまれに見る不細工であることを知っています。

断言できますが多くの男性は、「一途で健気な女性」を思い描いてくださいと言われたとき、純朴で可憐な女性像を求めてしまうので、末摘花はその役に適していないと感じてしまいます。

つまり、末摘花の醜い容姿は、ストーリーとそれに期待されるキャラクター像のもつれを生み出しているわけです。

その結果、読者は固定観念に囚われている自分を見出し、たとえ容姿は醜くとも、その想いは尊重すべきではないのか?という自問自答が生まれます。

恋愛において容姿は重要な要素ですが、想いそれ自体に容姿は関係ありません。

紫式部は末摘花というキャラクターをうまく用いることで、強かに生き抜いていかなければならない当時の女性たちへ向けて、「想い」の重要性を伝えることに成功していると感じます。

容姿がダメでも成功できる(運も実力のうち)

そんな末摘花の志に打たれた光源氏は、彼女のことを保護しようと考えて、二条東院(光源氏とかつて関係があり身寄りのない女性を囲う邸宅)に住まわせることを決めます。

まさかまさかの展開で、あの末摘花が光源氏の二条東院に住むことになるとは思いもよりませんでした。

そもそもですが、10年前(源氏が18歳のとき)に出会った末摘花の話は、失敗した一度きりの関係だったと思っていて、その後も関係が続いていたこと自体に驚きです。

しかも今回、花散里の家に行こうと思って、「たまたま」末摘花の家の前を通りかかったことで、光源氏は彼女のことを思い出します。

家の前を通るまで忘れているなんて。。。ふつうの感覚なら「この道で行くとあの子の家の前を通ることになるな・・・」くらい考えますよね笑。それくらいたくさんの女性と関係を持ったことが伺えます

まあともかく、光源氏が須磨へ行ったことで苦境に立たされるも、彼を信じて待ち続けることで幸福を手にするシンデレラストーリーは、源氏物語の枝葉に鮮やかな葉をつけています。

当時の貴族女性に読まれたという源氏物語。

そのなかでも末摘花の存在は、容姿に自信のない女性たちにいくばくかの勇気を与えたことが想像されます。

次の第16帖は「関屋」。末摘花と同じように、少し懐かしいあの人が登場します。

「蓬生」の登場人物

光源氏

28歳。花散里の邸宅に遊びに行く途中、末摘花の家の前を通りかかり彼女の存在を思い出す。

自分を待ち続けていた末摘花に心を打たれて、二条東院に住まわすことを決める。

末摘花

光源氏が須磨へ行ったことにより経済的に困窮するも、彼を信じて待ち続ける。

そのかいもあって、二条東院に住めるという幸運を手にする。

惟光

光源氏の従者。

ぼうぼうとしている末摘花邸の雑草を踏み分けて、源氏に道を作る。

末摘花の叔母

末摘花を都から退かせようとするも失敗する。

意地悪な叔母と薄幸のヒロインという、シンデレラ型に近いのキャラクター設定。

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