『源氏物語』第7帖「紅葉賀」のあらすじ
朱雀院の行幸
18歳になり、頭中将と一緒に青海波を舞った光源氏。
あまりの美しさに、人々は涙を流すほどでした。
藤壺の出産
しかし、そんな舞を素直に楽しめない人がいました。
藤壺は光源氏との子を出産し、その子の容貌が光源氏にそっくりだったのです。
帝をはじめ、人々は光源氏との子であることに気が付きませんでしたが、藤壺と源氏は苦悩します。
若紫の成長
若紫は日に日に大人びていきます。
あるときなどは、源氏があまり訪ねてこないことを恨んでみたりするのです。
そんな若紫の噂を聞きつけた葵上は、より一層源氏に冷たく当たります。
源典侍との戯れ
光源氏も19歳となった頃、好色者として有名な源典侍が源氏に迫ります。
57歳の彼女を相手に、少しだけ戯れてみようと思った光源氏。
しかし、彼女のところに泊まった場面を頭中将に目撃され、おどかされてからかわれます。
源典侍は、頭中将とも関係を持っていたのです。
滑稽な話なので、二人は互いに口止めをしたのでした。
『源氏物語』「紅葉賀」の恋愛パターン
光源氏―源典侍
- 光源氏:戯れで典侍と遊んでみよう
- 源典侍:57歳だが色好きで源氏に迫ろうとする
『源氏物語』「紅葉賀」の感想&面白ポイント
「紅葉賀」では、光源氏と4人の女性の関係が描かれています。
- 若紫→北山から連れてきた少女
- 葵上→光源氏の妻
- 藤壺→光源氏の子を孕んでいる義母
- 源典侍→色好きな女御
彼女たちと源氏が、現在どのような関係なのかがまとめられている回です。
若紫の成長と自己認識
この回で、若紫は10歳になります。
お付きの少納言に、
「もう10歳にもなったのですから、そろそろ人形遊びばかりしていないで、夫(光源氏)のために女性らしい振る舞いをしないといけませんよ」
なんて言われて、
「えっ?わたし光源氏の女だったの???」
と驚きます。
それもそのはず、若紫は邸で寝ていたとき、光源氏に拉致されて二条院にやってきて、わけも分からず過ごしていたのですから。
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『源氏物語』「若紫」の簡単なあらすじ&感想!藤壺と若紫の関係性から光源氏と葵上の不和まで!
でもまあ今の暮らしも悪くないし・・・と納得する若紫。
この瞬間から、子どもだった若紫が「大人の女」になってきます。
具体的には、二条院にあまり訪れない光源氏に恨みごとを言ってみたり、かまってくれないので拗ねてみたり。
まだまだ子どもっぽいですが、少し大人の女性に近づいた若紫を発見して、光源氏もご満悦です。
これは憎い。そのようなことを言うようになったのですね。
(あなにく。かかること口なれたまひにけりな)
『源氏物語』「紅葉賀」
これまでは、人形遊びばかりしている様子や、「雀の子を犬君が逃がしてしまったの」なんて言って、いかにも子どもっぽかった若紫。
「紅葉賀」はそんな彼女が、大人への一歩を登り出す重要な場面となっています。
藤壺の出産
帝の子(本当は光源氏の子)を妊娠していた藤壺の出産も、「紅葉賀」で描かれます。
生まれてきた子は、なんと光源氏そっくり。
悪い噂が立ちはせぬかと案じていた藤壺ですが、だれも本当の父親のことには気が付きません。
桐壺帝も、
なんて言って、光源氏が父親だなんて思いもよらない様子です。
まぁ、帝と桐壺の息子が光源氏。今回は桐壺とうりふたつの藤壺と、帝との間に息子なので、似ていたとしても不思議ではありません。
生まれた若宮は、のちの冷泉帝となります。
呪いをかけていた弘徽殿女御
また、藤壺の出産時には、弘徽殿女御が藤壺に呪いをかけていたことが分かる場面がありました。
呪いの件を知った藤壺は、
「そのまま死んでいたら相手の笑いものになってたわ・・・」
と、強く生きていく気持ちを新たにしています。
気持ちで負けて死んでしまった桐壺とは対照的な場面ですね。
青海波に見える比喩~引く藤壺と寄せる若紫~
「紅葉賀」とは、紅葉の頃(秋)に行われた行幸であり、簡単に言えば秋のパーティーです。
そこで光源氏は頭中将と一緒に、「青海波」という舞を披露します。
青海波は、波に見立てた装束を着て、二人で舞うことが特徴です。
一人は引く波を、もう一人は寄せる波を表すと言われます。
藤壺が皇子を出産したので、光源氏は今まで以上に藤壺と会うことは難しくなりました。
一方で、子どもっぽかった若紫は、少し大人の女性の兆しが見え始めます。
これを青海波に付き合わせて考えると、藤壺は引いて行く波に、若紫は寄せてくる波に喩えられているのかもしれません。
葵上との関係
光源氏と、その妻である葵上。
上手くいかない関係の二人ですが、そこへきて若紫の存在が、よりいっそう溝を深めてしまいます。
というのも、
「知ってる知ってる!まだ分別も付かないほどの人だとか。隠しているってことは、きっと身分も大したことないのよ。葵上様かわいそう~」
という噂が立って、若紫の存在が葵上の耳にも入ってしまうのです。
それ以降、葵上は光源氏に一層冷たく当たります。まあ当然ですね。
第1帖で光源氏と結婚したヒロインの葵上ですが、ずっとツンとしたまま。
おそらく光源氏はデレを期待しているのでしょうが、第7帖になってもそのような兆しは全く見えません。
源典侍の滑稽譚
メインキャラで彩られる第7帖ですが、彼女たちに劣らず目立った登場人物がいます。
源典侍という57歳の老婆が、光源氏に迫って関係を持つのです。
現代では57歳でも美しい人はたくさんいて、源典侍も「気品があり、色っぽい女性だった」というので、それなりの美貌はあったのでしょう。
とはいえ57歳。当時の平均寿命は40歳ほどなので、かなりの高齢です。
19歳の光源氏とは、38も年が離れています。ちょうど3倍の年齢というわけですね。
ちなみに前々巻が「若紫」第6帖。
9歳の幼女の話から、次は57歳の熟女の話と、このダイナミックな振り幅で面白く読ませるのも、『源氏物語』の魅力でしょう。
頭中将のいたずら
源典侍との場面で特に面白いのが、光源氏が彼女の部屋に泊まっているところに、頭中将が忍び込んでくる場面です。
頭中将は、源典侍の夫である「修理大夫」のふりをして、怒気を放ちながら光源氏に迫ります。
光源氏は着物をきちんと着る時間も無く、下着姿で屏風の裏に隠れていたので、
「この姿で月明かりの下を走り逃げるなんて、さすがに格好悪すぎるな・・・」
と思い、じっとしていたんですね。
頭中将が大きな音を立てながら屏風に近づき、暗闇の中で太刀を引き抜くと、恐ろしくなったのは源典侍。
と叫びながら、二人の間に入ります。
光源氏はこのときに、「もしや頭中将だな?」と気づきます。
頭中将の腕をつねりながら、
「ちょっとこれはマジで洒落になりませんよ」
と言って、着物の引っ張り合いをはじめる二人。その間に放って置かれる老婆。
コントのような情景に思わず笑ってしまう場面ですが、「紅葉賀」では印象的な挿話でした。
『源氏物語』「紅葉賀」の主な登場人物
光源氏
18歳~19歳秋までの光源氏。
藤壺の出産、葵上との不和、若紫の養育が気がかりながらも、源典侍と戯れる。
頭中将
源典侍と関係を持っていた。
光源氏をおどろかしてからかったところ、互いの衣服がほどけてしまった。
藤壺
光源氏との子を出産。光源氏に容貌が似すぎているので、噂を怖がる。
弘徽殿女御の悪い呪いの噂を聞き、強く生きる決心をする。
若紫
10歳にして、光源氏が夫であることを初めて意識する。
それ以来、女性らしくすねてみたり、恨みごとを言ったりするようになる。
源典侍
57歳の好色な女性。風流気で色っぽく、修理大夫(すりのかみ)という夫がいる。
頭中将と関係を持ちながらも、光源氏に迫る。
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